研究課題/領域番号 |
24590939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
足立 政治 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50467205)
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研究分担者 |
安田 一朗 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377673)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸がん / 紫外線 / がん予防 / EGFR / 脂質ラフト |
研究概要 |
我々は今までに各種大腸がん細胞株において短波長紫外線(UV-C)が強力に細胞増殖抑制およびアポトーシスを引き起こすことを見出しているが、当該年度において我々は大腸がん細胞(HT29, SW480, HCT116,DLD-1)において古典的標準抗がん剤cisplatinとUV-Cが相乗的にreceptor tyrosine kinaseのdownregulationを引き起こすことを見出した(Kawaguchi J, Adachi S et al., Mol Cancer 2012)。この中でUV-Cは単独では表在に存在するEGFRの内在化を引き起こすものの、低用量では分解を誘導するには至らず再びリサイクルされることが分かった。しかしUV-Cとcisplatinの併用によりEGFRやHER2の分解が増強されるというメカニズムを見出した。 さらに、膵がん細胞では血小板由来成長因子(PDGF-BB)によるmigration促進効果に対しUV-Cが抑制的に働くことを見出した(Kawaguchi J, Adachi S et al., Oncol. Rep 2012)。この中でUV-CはAktシグナル伝達系を抑制することでこのmigration抑制効果を発揮することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はUV-Cの脂質ラフトへの影響を検討する予定であったが、実験系の確立にやや遅れを認めた。しかし我々は以前に報告したDiIC16-Triton-X100 slubility assay(Adachi S et al., Cancer Res 2007)を用いてUV-Cが脂質ラフトの形成に甚大な影響を及ぼす事象を高性能蛍光顕微鏡で観察しており、今後これらを裏付けるために他の免疫生化学的手法を用いて検討する予定である。 さらに実際の臨床応用を考える上で、既存の治療との併用効果を検討することは極めて重要であると考えており、すでに報告した膵がんにおけるgemcitabineとの併用(Adachi S et al., Biochem Biophys Res Commun 2011)と合わせ、UV-Cとcisplatinとの併用効果のメカニズムを見出せたことからおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヌードマウスを用いたヒト大腸がん移植実験モデルにおけるUV-C照射の有効性についての検討を行う。我々はSW480を含む4種類の大腸がん細胞株において、UV-Cが膜表面のEGFRを内在化させ脱感作させること、さらに細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導効果を引き起こすことを報告してきた (Adachi S et al., J Biol Chem 2011)。これらの現象がin vivoでも起こるのかを検討するため、SW480を移植したヌードマウスモデルを用い、UV-Cの大腸がん細胞増殖抑制効果をEGFRの局在の観点から検討する。皮下に発生した腫瘍に関しては、肉眼的検討(tumor size)、組織学的検討(浸潤、転移の有無も含む)、さらにEGFRを含む各種RTKsの免疫組織学的検討を行う。 さらにヒトにおける体外血液循環装置を用いた血液へのUV-C照射によるがんの転移抑制の有効性の検討を行う。我々は最近、UV-Cががん細胞の遊走能を抑制させることを見いだした(Kawaguchi J et.al., Oncol Rep 2011)。大腸がんでは浸潤転移の有無が生命予後を決定する重要な因子であることから、血液中に浮遊するがん細胞に対し、UV-C照射を行うことで、大腸発癌モデルマウスの転移抑制・生命予後延長効果があるかを検討する。まず健常マウスの血液へのUV-C照射実験にてUV-C照射の安全性(有害事象、副作用)について検討する。次にマウス大腸発癌モデルの血液に対するUV-C照射実験を行う。大腸発癌モデルとしてDSS/AOM投与による腸炎由来大腸発癌モデル、遺伝子背景(ApcMin/+マウス使用)に基づいた腸管発癌モデルを用いる。UV-C照射方法は上記と同様であるが、照射するタイミング・量・間隔については十分に検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は当初計画していた基礎研究に遅れを認めたため、それに伴い試薬等予定していた消耗品費が減少した。 本研究経費は主に培養細胞実験、実験動物、蛋白質解析および遺伝子発現解析等の検討に要する消耗品費および試薬に充てられる。またヌードマウスや発癌モデルマウスの作成を行うため、繁殖・維持に相当額が見込まれる。
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