研究概要 |
第1に,申請者らはRal-GAPα2KOマウスおよび野生型マウスに対してデキストラン硫酸投与による急性および腸炎モデルを作製し、腸炎誘導後の組織の炎症の程度の評価,および組織中のサイトカイン産生の評価を行った。その結果、Ral-GAPα2KOは野生型マウスに比し、非常に激しい急性腸炎が生じることが確認された。組織中の炎症性サイトカインではIL-17の発現が野生型マウスに比べて、Ral-GAPα2KOマウスにおいて高いことが示された。この結果から、Ralは炎症腸管局所におけるIL-17産生に重要な役割を果たすことが示唆された。 第2に,マウスに大腸指向性の変異原Azoxymethane (AOM) 2.5mg/kgを腹腔内投与後、2.5%デキストラン硫酸 (DDS)の経口投与(1週間投与:2週間休薬)を3サイクル繰り返すことにより、炎症性大腸癌を誘導した。野生型マウスに比べてRal-GAP遺伝子欠損マウスでは、平坦型の大腸腫瘍が生じ、この腫瘍はIBD関連の前癌病変と考えられるdysplasiaの形態に非常に類似していることが示唆された。 さらに、野生型マウス骨髄を移植したRaGAPα2KOマウス(WT→RalGAPα2 KO)を作製し、これらのマウスに対して、AOM+デキストラン硫酸投与による炎症性大腸癌を誘導した。現在、このマウスを用いて、腸管上皮の免疫担当細胞(NK細胞、NKT細胞、macrophage, T細胞等)を単離し、Ral-GTPの発現量、活性、およびRal-GAPの発現量やサイトカイン産生能等を評価し、炎症性大腸発癌おける各免疫担当細胞の役割、Ralによる制御機構の解明に取り組んでいる。
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