研究課題
第1に、申請者らはRal-GAPα2 KOマウス脾細胞からCD4(+)CD62L(+)を抽出し、Rag2KOに移入した。その結果、野生型マウスのCD4(+)CD62L(+)を移入したマウスに比べて、腸管炎症は増強されていた。粘膜局所のサイトカインの発現を検討した結果、IL-1β, IL-6, およびIL-17の発現誘導が著明となっていた。第2に、RaGAPα2 KOマウスへAOM+デキストラン硫酸投与による炎症性大腸癌誘導モデルを作製した。野生型マウスに比べ、RaGAPα2 KOマウスではColitic cancer 類似の浸潤型大腸癌が観察された。この結果からRalは炎症局所のサイトカイン発現を増強させ、炎症性大腸発癌誘導に関連する分子であることを示唆している。第3に、我々はこの炎症性腸疾患関連大腸癌モデルに対し、抗TNFα抗体、抗IL-6抗体投与を行った。その結果、これらの抗サイトカイン抗体投与による腫瘍抑制効果が確認された。第4に、今回申請者らはRalがIL-17だけではなく、IL-1βの発現に関与する新知見を得た。一般に、IL-1βの産生はInflammasoneと関連していることが知られている。また、近年、炎症性腸疾患の病態におけるInflammasoneの役割が注目されいる。従って、現在、RalとInflammasoneとの関連を明らかにするために、我々は引き続き研究を進めている。本研究の継続は、Ralのinnate immunity systemにおける役割が明らかとなる可能性が高い。その結果は、新しい研究領域の開拓に結びつき,今後の発展が期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年の研究計画は主として、炎症性大腸発癌モデルにおけるRalの関与についての検討であった。我々は、新たなcell transfer colitis modelを用いてRalの大腸炎における役割を検討した。その結果、RalはIL-17のみならず、IL-1βの発現にも関与することが明らかとなった。加えて、我々が今回作製した炎症性大腸発癌モデルにおいて、抗サイトカイン療法による腫瘍縮小効果を確認した。新たな展開としては、RalがIL-1βの発現に関与する点に着目し、Ral とInflammasoneとの関連について取り組みを開始している。このように、申請者の計画はほぼ遂行されているだけでなく、新しい知見の解明にも取り組んでいる。
すでに記載したように、申請者の研究計画は順調に進んでいる。申請した研究計画に加え、RalはIL-17およびIL-1βの発現に関与していることが明らかとなっており、IL-17およびIL-1βの新たな産生メカニズムを解明していくとともに、人炎症性腸疾患発癌検体におけるRalの発現解析にもとりくんでいく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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