研究課題/領域番号 |
24590944
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
馬場 英司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00315475)
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研究分担者 |
新納 宏昭 九州大学, 大学病院, 助教 (20380636)
赤司 浩一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80380385)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エクソゾーム / 消化器癌 / 癌幹細胞 / 微小環境 |
研究概要 |
本研究では消化器癌細胞由来エクソゾームの生体内機能を明らかにするため、(1)消化器癌細胞由来のエクソゾームが特異的に含んでいるマイクロRNA(あるいは他の核酸)を同定すること、(2)およびこの疾患特異的なマイクロRNAが機能を発揮する場として、消化器癌組織の中にある癌幹細胞とこれを取り巻く微小環境(ニッチ)との相互作用におけるエクソゾームの役割を明らかにすることに取り組んだ。まず(1)について、インフォームドコンセントを得た消化器癌患者の末梢血よりエクソゾームを調整し、健常人末梢血エクソゾームとのマイクロRNAアレイによる比較により、疾患特異的なマイクロRNA候補を複数選別した。これらは別に収集された健常人、患者血清を用いたPCR法による確認が必要であり、現在も継続して検体の採取と候補RNAの確認を行っている。(2)については、消化器癌手術検体より消化器癌幹細胞とニッチを形成する細胞を個別に調整・評価し、機能解析をすることが必要である。分離した細胞を既報の幹細胞マーカー分子を指標にFACSにてソーティングを行い、この幹細胞性は免疫不全マウスにおける継続的な造腫瘍能、in vitroにおけるオルガノイド形成能にて確認を行った。手術検体から安定して癌幹細胞集団を分離すること、in vivoおよびin vitroにおいて幹細胞性を証明することは容易ではなかったが、当研究グループでは研究期間にこれらの手法を樹立する事ができた。得られた大腸癌幹細胞集団を、Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT)関連分子の発現パターンにより細分化してその幹細胞性の違いを検討し、新たな知見を得た。今後はこれらの癌幹細胞が放出する腫瘍由来エクソゾームを調整し、その特徴とニッチ細胞への影響を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化器癌細胞由来エクソゾームは患者血清中から検出可能と考えられる。これは平成21-23年度科学研究費基盤研究「腫瘍由来エクソゾームに含まれるマイクロRNAの機能解析と消化器癌診断への応用」において、安定して効率良い手法を確立したことから継続して実施している。マイクロRNAアレイによる疾患特異的マイクロRNAの選別過程には、複数の分子が候補となるため別の多数の検体を用いた確認が必須である。これは本研究計画期間を通じて継続する必要があると予想される。 一方、調整された腫瘍特異的エクソゾームが癌幹細胞と微小環境との関係においてどのように機能するかを解析するには、癌幹細胞集団の調整、その幹細胞性の確認が前提となる。消化器癌においてはCD44、EpCAM、CD133発現などが癌幹細胞の指標となる細胞表面分子の候補として報告されているが、未だ確立されていない。本研究グループでは消化器癌手術検体から分離した細胞より、多色FACSによる精密なソーティングを実施して細胞を回収し、これを免疫不全マウスに移植して連続的な造腫瘍能を確認し、さらにin vitroにおいてオルガノイド形成能も確認した。これらの手法の確立は容易でないため、本研究期間において可能となったことは意義深く、今後これらの細胞を用いて疾患特異的なエクソゾームの機能解析の推進が可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
消化器癌患者血清中には癌細胞由来エクソゾームが含まれているが、これらは遺伝的に多彩な癌細胞から産生されている可能性があり、均一ではないと予想される。従って本研究計画当初から実施している血清中のエクソゾームの解析に加え、上述の研究実績の概要でも記したように、癌幹細胞と非癌幹細胞集団からそれぞれ産生されるエクソゾームを個別に測定する等、より詳細な解析が必要と考えられる。 今後の研究推進の方策としては、まず疾患特異的エクソゾームをより多く回収し、疾患のバイオマーカーとなり得るマイクロRNAの同定を継続して実施する。さらに癌幹細胞と微小環境との関係における、疾患特異的エクソゾームの機能を解明するために、上述のような癌幹細胞由来エクソゾームなどのより選別された腫瘍細胞集団を対象に解析を進めてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者血清由来エクソゾームを調整、含有するマイクロRNAを精製しマイクロRNAアレイ解析、およびPCR法による血清エクソゾーム中の標的マイクロRNAの定量を実施する。研究費は主にこれらの分子生物学的実験試薬に用いる。 また手術検体より癌細胞および微小環境を形成する細胞を分離し、表面分子を指標として多色FACSによる癌幹細胞集団のソーティングを行う。得られた細胞集団は、in vitroにおいてオルガノイド形成による幹細胞性を確認する。研究費は、ソーティングの際に用いる蛍光色素標識抗体、およびオルガノイド培養系に添加する多数の増殖因子(蛋白製剤)に使用する予定である。
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