研究概要 |
1) 腸管特異的ノックアウトマウスの作成:レプチンシグナルに関わる各種ノックアウトマウスを作成した. Villin Creマウス, レプチンレセプターFloxマウス(Dr. Chua, Albert Einstein College of Medicineより分与), STAT3 Floxマウス, TNF-α Floxマウス, CD8 Floxマウスにより各種腸管特異的ノックアウトマウスを作成した. その後, ノックアウトマウス群とコントロール群に対し, 化学発がんを発症させその腫瘍サイズ, 数, 発現タンパク, 遺伝子などを解析した. 2) エレクトロポレーションによるIL6高発現モデルマウスの作成および腫瘍発生の検討:肥満関連大腸発がんにおいてIL6をエレクトロポレーションにより形質転換し腫瘍発生の変化を検討した. さらに, 発現タンパク, 遺伝子などを解析する. IL6はレプチンレセプターと相同性の高いgp130のリガンドであり, JAK/STATシグナルを活性化するため, この経路解析を行った. 3) 拡大内視鏡を用いたヒト大腸 ACFの観察, 生検:色素拡大内視鏡によりリアルタイムにヒトACFを観察, 生検した. 4) ヒトACFの自然史解析:ヒト大腸ACFは内視鏡で経過観察することにより時間経過による自然史を追うことが可能となり結果を報告した.現在までに1200例以上の下部直腸のACFを観察し得たが, 自然史や全大腸のACFや腺腫, がんとの因果関係はいまだ明らかとなっていない. ACFは組織学的にdysplastic ACFとnon-dysplastic ACFに分類されるが, 遺伝子欠損やエピジェネティック変異などの点これまでの既知の経路のどこに位置するのか解析した.
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今後の研究の推進方策 |
5) 大腸腫瘍とアディポサイトカインの因果関係の解析 大腸発がんと関連するアディポサイトカインを絞り込む. 大腸発がんと血清レプチン値は相関し血清アディポネクチンは逆相関することを報告している. 内臓脂肪と大腸発がんは相関し, これにアディポサイトカインは重要な役割を果たしていることが考えられる. アディポサイトカインの血清値および正常大腸上皮, 腺腫, がんにおける受容体以降のJAK/STAT経路, PI3K/AKT経路, Ras/Raf/MEK/ERK経路などの増殖シグナル, 発がん経路を免疫組織化学的に解析し, さらに蛋白・遺伝子レベルでの解明を検討する. 6) メトホルミンの大腸発がん抑制作用の検討 ヒトACFをサロゲートマーカーとしたメトホルミンの腫瘍抑制作用をパイロットスタディーで確認した. この知見を踏まえ, 多施設共同前向き無作為化比較試験を行い, 臨床応用を目指す. すでに学内倫理委員会の承認を得ており, 協力施設を選定している. 各100例のエントリーを目指す.
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