研究概要 |
【目的】炎症性腸疾患は、遺伝的背景や外的因子に対する過剰免疫反応が腸管粘膜障害を起こす。TNFαはその病態において中心的役割を果たす。抗TNFα抗体治療は有効な治療であるが、無効例や二次無効が存在する。膜結合型TNFαはADAM17により可溶型TNFαに切断・放出される。ADAM17が放出するタンパクは2型膜蛋白のAmphiregulin(AR),HB-EGFなどがある。ARP36は、ADAM17によるAR,HB-EGFの放出を制御する。今回、単球細胞、大腸上皮細胞に発現しているARP36-2に着目し、TNFα放出制御機能について検討した。 【方法】大腸上皮細胞株(HCT116,HT29)単球細胞株(U937)を使用した。ADAM17とARP36-2との結合を確認するために抗ARP36-2抗体で免疫沈降後、抗ADAM17抗体にてwestern解析した。TNFα,EGFリガンド放出測定系確立のため、Alkaline phosphatase(AP)標識TNFα,AR,HB-EGF前駆体蛋白強発現細胞株を樹立した。IL-1β,TPAで刺激後上澄中のAP活性を測定した。さらに、ADAM阻害剤(KB-R7785),ARP36-2 si-RNAによりARP36-2蛋白を欠失後、AP活性を測定した。ELISAでもTNFα放出を直接測定した。 【結果】免疫沈降によりADAM17とARP36-2は結合した。APアッセイにおいてIL-1β,TPA刺激後TNF-α放出が確認された。その活性上昇は、ARP36-2 siRNA,KB-R7785前処置により有意に抑制された。AR,HB-EGF放出は、ARP36siRNA前処置により促進した。 【結語】ARP36-2阻害は、炎症を抑え、増殖・修復効果を促進する新たな治療戦略になりうる。
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