研究課題
基盤研究(C)
患者数は増加し13万人を超えた。しかし原因はいまだ解明されておらず病態解明とそれに基づいた治療法の開発が急務である。UC患者の腸管粘膜局所にIgG産生形質細胞が増加していることは臨床病理学的特徴の一つとして知られているが、その病態への関与は未解明のままであった。我々はこの形質細胞浸潤が病態に関与していることを明らかにするために研究を開始した。我々は潰瘍性大腸炎患者腸管粘膜に浸潤しているIgG産生形質細胞は通常腸管粘膜に存在するIgA産生形質細胞とは異なりCXCL12-CXCR4 axisによって腸管に浸潤していること、IgG産生形質細胞は免疫複合体の産生により腸管マクロファージを刺激し潰瘍性大腸炎の病態形成に関与していることを世界で初めて明らかにした(Uo M, Hisamatsu T, et al. Gut. 2012 Sep 26.)。Fc受容体を介した免疫複合体からの刺激は細菌刺激による経路とは独立した因子として炎症惹起に関与していることも明らかとなり、新たな創薬の標的となりうると考えられた。現在、Fc受容体経路を阻害する低分子化合物のスクリーニングを開始した。またより詳細な病態を解析し、治療薬候補分子のin vivoでの評価を可能とするために慢性DSS腸炎モデル、腸管特異的CXCL12強制発現マウスを用いてIgG産生形質細胞による潰瘍性大腸炎類似腸炎モデルの確立を試みている。
2: おおむね順調に進展している
現在までに潰瘍性大腸炎患者の腸管IgG産生形質細胞がユニークなケモカインシステムを用いて腸管に浸潤していること、さらにIgG免疫複合体が腸管マクロファージのFc受容体を刺激しサイトカイン産生を増強させていることを明らかにした。潰瘍性大腸炎のIgG産生形質細胞浸潤は古くから教科書に記載されるほどの特徴的な病理学的所見であったが、今回我々の研究によってその浸潤メカニズムと病態への関与が証明された。特にヒトサンプルを用いて証明されたことが重要であり潰瘍性大腸炎の病態解明における大きな進歩である。この成果はGut誌に掲載され、全米消化器病学会や国際粘膜免疫学会を含む国内外の学会や研究会などで発表された。また、IgG形質細胞を標的とした治療薬の開発にも着手しており、すでにFc受容体シグナルを阻害する候補分子をいくつか見出している。最終的に治療薬の候補となる分子の有効性確認にはマウス腸炎モデルを用いたin vivo実験が必須であるが、IgG産生形質細胞浸潤を特徴としたマウス腸炎モデルは確立されていない。そこで我々は新たなマウスモデルの作成を開始した。すでに野生型マウスにおいて慢性DSS腸炎を誘発すると経過とともにIgG産生形質細胞浸潤がおこることを見出した。そこで潰瘍性大腸炎に類似したマウスモデルとして腸管上皮細胞特異的CXCL12強制発現マウスを作成し慢性DSS腸炎を誘発し解析を開始している。また慢性腸炎におけるCXCL12の発現変化を可視化するため、京都大学長澤研究室よりCXCL12-GFPマウスを入手し研究を開始した。
当初の予定通り、IgG 型形質細胞浸潤の特徴を有するマウス腸炎モデルの開発①慢性DSS 腸炎モデルにおけるIgG 型形質細胞浸潤の検討:急性DSS 腸炎モデルではIgG 形質細胞浸潤は認めないが慢性DSS 腸炎モデルではIgG 形質細胞浸潤が起きることを突き止めている。このモデルを用いて本来のIgG 形質細胞の貯蔵場所である骨髄と腸管における同細胞の動態を経時的に解析し、慢性腸管炎症がIgG 形質細胞の組織分布に与える影響を明らかにする。②腸管上皮細胞特異的CXCL12 トランスジェニックマウスの作成と解析:腸管特異的villin プロモーターを用いて腸管上皮細胞特異的にCXCL12 を発現するマウスの作成が終了したので、本マウスにおいてIgG 形質細胞の動態、腸炎発症について解析する。③CXCL12-GFP マウス(native CXCL12 発現の可視化可能なマウス):京都大学の長澤丘司教授らの開発した本マウスはCXCL12 の発現細胞を可視化できるマウスである。このマウスに慢性腸炎を誘発することで腸炎発症時における腸管でのCXCL12 発現細胞を同定する。特にDotan らが推測している腸管上皮細胞に発現するかどうか興味深い。
試薬等の購入に120万円、実験器具の修理用に間接費36万円を使用予定。
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