研究課題/領域番号 |
24590951
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久松 理一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60255437)
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研究分担者 |
徳武 美奈 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (30468524)
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / IgG形質細胞 / 免疫複合体 |
研究概要 |
患者数は増加し13万人を超えた。しかし原因はいまだ解明されておらず病態解明とそれに基づいた治療法の開発が急務である。UC患者の腸管粘膜局所にIgG産生形質細胞が増加していることは臨床病理学的特徴の一つとして知られているが、その病態への関与は未解明のままであった。我々はこの形質細胞浸潤が病態に関与していることを明らかにするために研究を開始した。我々は潰瘍性大腸炎患者腸管粘膜に浸潤しているIgG産生形質細胞は通常腸管粘膜に存在するIgA産生形質細胞とは異なりCXCL12-CXCR4 axisによって腸管に浸潤していること、IgG産生形質細胞は免疫複合体の産生により腸管マクロファージを刺激し潰瘍性大腸炎の病態形成に関与していることを世界で初めて明らかにした(Uo M, Hisamatsu T, et al. Gut. 2012 Sep 26.)。Fcg受容体を介した免疫複合体からの刺激は細菌刺激による経路とは独立した因子として炎症惹起に関与していることも明らかとなり、新たな創薬の標的となりうると考えられた。現在、Fcg受容体経路を阻害する低分子化合物のスクリーニングを開始した。またより詳細な病態を解析し、治療薬候補分子のin vivoでの評価を可能とするために慢性DSS腸炎モデル、腸管特異的CXCL12強制発現マウスを用いてIgG産生形質細胞による潰瘍性大腸炎類似腸炎モデルの確立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに潰瘍性大腸炎患者の腸管IgG産生形質細胞がユニークなケモカインシステムを用いて腸管に浸潤していること、さらにIgG免疫複合体が腸管マクロファージのFcg受容体を刺激しサイトカイン産生を増強させていることを明らかにした。潰瘍性大腸炎のIgG産生形質細胞浸潤は古くから教科書に記載されるほどの特徴的な病理学的所見であったが、今回我々の研究によってその浸潤メカニズムと病態への関与が証明された。特にヒトサンプルを用いて証明されたことが重要であり潰瘍性大腸炎の病態解明における大きな進歩である。この成果はGut誌に掲載され、全米消化器病学会や国際粘膜免疫学会を含む国内外の学会や研究会などで発表された。また、IgG形質細胞を標的とした治療薬の開発にも着手しており、すでにFcg受容体シグナルを阻害する候補分子としてSyk阻害剤がFcg受容体を介した炎症性サイトカイン産生を抑制することを確認した。IgG産生形質細胞浸潤を特徴としたマウス腸炎モデルの確立については腸管上皮細胞特異的CXCL12強制発現マウスを作成した。同マウスに慢性DSS腸炎を誘発するとその一部にIgG産生形質細胞が浸潤した慢性大腸炎を起こすことを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
我々は腸管上皮細胞特異的CXCL12強制発現マウスに慢性DSS腸炎を誘発するとその一部にIgG産生形質細胞が浸潤した慢性大腸炎を起こすことを見出した。これはヒト潰瘍性大腸炎に認められる組織学的特徴を反映した新たなモデルとなりうるが、その発症率が100%ではなく、おそらく腸管上皮細胞におけるCXCL12過剰発現、炎症のinitiationに加えて他の因子が関与している可能性を考えている。特に腸内細菌との関連性に着目し、IgG産生形質細胞が浸潤した慢性大腸炎発症マウスにおいてIgGが腸内細菌抗原に対するものかどうかを確認したい。
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