研究実績の概要 |
【背景・目的】肝癌, 膵癌における小胞体(ER)ストレスおよびアンドロジェンレセプター(AR)シグナリングの相互作用を明らかにしてきた. 膵癌進展および慢性C型肝炎の病態進展におけるGRP78のアポトーシスへの関与を中心に検討する.【方法】1) ERストレス誘導剤Thapsigargin (TG)(1μM)の存在下および非存在下で膵癌細胞株におけるGRP78およびその下流分子の発現をWestern blottingを用いて検討した. 2) GRP78に対するsiRNAを用いてTG存在下におけるPARP切断をWestern blottingを用いて検討した. 3) HepG2 controlとHepG2-NS5A細胞にTGにより細胞死を誘導し, HCV NS5Aの影響を検討した. 5) NS5A ISDRに変異を導入し, その影響を検討した.【成績】1) 膵癌細胞株 (KP-2, MIAPaCa-2, Panc-1, SUIT-2)は恒常的にGRP78を発現していた. 2) TGは膵癌細胞株においてGRP78発現を増加させ, TG存在下においてGRP78のknock-downはPARP切断を増強させた. ARを高発現しているKP-2細胞では TGにより, GADD34, ATF4, ATF6, XBP1の発現増強およびeIF2αのリン酸化の増加が特に強くみられた. 3) 一方, HepG2細胞を用いた検討でNS5AはTG誘導性アポトーシスを阻害した. この作用はNS5AによるGRP78の発現増強と関連していた. 4) NS5AによりPARP切断, Caspase-3, -7, -9やBaxの発現減弱がみられた. 5) また免疫染色によりNS5AとGRP78の相互作用を確認した. 6) NS5A ISDRに変異を導入しても影響はみられなかった.【結論】肝癌・膵癌ではARシグナルがERストレスと相互作用している. 膵癌細胞やHCV感染肝細胞ではGRP78の発現増強によりアポトーシス抵抗性を獲得していることが明らかとなった.
|