研究課題/領域番号 |
24590958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 美奈 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (30401342)
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研究分担者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | C型慢性肝炎 / インターロイキン6 / コア変異 / 治療抵抗性 / DAA製剤 / 小胞体ストレス |
研究概要 |
HCVを直接攻撃する薬剤としてDAA製剤が登場し、PEG-IFN/RBVとの3剤併用治療が注目されているが、宿主遺伝子IL28B、HCV遺伝子コア70アミノ酸変異、これら双方の治療抵抗因子を持つ症例では、3剤併用治療でも治療の有効性は低いとされる。このような状況の中で、IFN治療抵抗性に関わる分子の特定は、難治症例に対する新規薬剤の開発につながる可能性がある。 申請者らは、独自に開発した変異HCV 培養細胞レプリコンシステムを用いて、臨床的に治療抵抗性であることが報告されているHCVコア70変異株を用いた培養細胞系の検討を行ったところ、 IL-6、SOCS 3の発現亢進、ISG抑制がみられた。また、コア変異株ではウイルス粒子形成•分泌低下を認め、小胞体(ER)ストレス蛋白の発現誘導がみられた。別のIFN治療抵抗株の系でもIL-6 mRNA発現が亢進しており、IL-6抗体処理によりIFN抵抗性が解除された。 これらの細胞培養系での知見をもとに、現在実臨床で使用されているDAA製剤(TVR)併用3剤治療に関して、当院および関連施設202例で導入された結果を解析したところ、下記の結果を得た。1) 治療終了4週後のHCV陰性化率(SVR4)を比較すると前治療:初回/再燃/無効=91%/93%/60%、IL28B別:TT/TG/GG=94%/87%/25%、コア70変異別:変異あり/なし=92%/69%(p=0.027)であり、治療抵抗症例では依然として十分な治療効果が得られていなかった。2) IL-6高値例では有意にBMI、血清TG値が高く、高度線維化症例が多かった。3) RVRが得られなかった症例では治療前血清IL-6値が高かった。4) コア変異株症例では治療開始後2-8週の血清IL-6が高く、3剤併用療法においてもIL-6が治療抵抗性に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度以降に予定していた臨床検体を用いた解析をおこなった理由は、新たに登場したDAA製剤併用治療においてもIL-6と治療抵抗性が関与しているか早急に検討する必要があったからである。今後しばらくは難治性C型慢性肝炎で最も治療効果の高い治療と思われるDAA製剤併用3剤治療においても、PEG-IFN投薬量と治療効果の有意な相関が認められたこと、IL-6は多機能サイトカインであり臨床検体でばらつきもみられるものの、血清IL-6値と治療抵抗症の関与が示唆されることから、今後の治療においてもIFNシグナル経路の解析や我々が注目しているIL-6を標的とした治療抵抗性機序の解明は十分有意義であると結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの培養細胞形ではHCVゲノタイプ2株を用いて変異HCV株培養系を用いたウイルス感染・増殖能・インターフェロン感受性の解析を行ってきた。現在より臨床的に近い系を樹立するため、ゲノタイプ1bの全長レプリコンを用いて、既報(Funaoka, J. Virology 2011; 85: 5986、Suda, Virology 2010; 407:80)に準じた実験スケジュールのもと、小胞体ストレスからみた治療抵抗機序との関与に関しても今後解析を追加していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養試薬、分子生物学試薬、免疫染色抗体・FACS用試薬などの消耗品を購入するほか、保存血清や肝組織などの臨床検体を用いた検体検査を行う予定。
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