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2012 年度 実施状況報告書

人工肝細胞移植系を用いたHCV感染動物モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 24590959
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

東 正新(陳正新)  東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (10376783)

研究分担者 柿沼 晴  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教員 (30372444)
渡辺 守  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード移植 / 発生・分化 / 再生医学 / 肝疾患治療 / 細胞・組織
研究概要

最近マウス線維芽細胞に2種類の遺伝子を導入するのみで、人工肝細胞を樹立することが可能であると示された。我々は今回申請する研究において、Direct Reprogramming法によりマウス線維芽細胞より人工肝細胞を樹立し、その細胞移植系を利用した新規のC型肝炎ウイルス(HCV)感染モデル動物をマウスにおいて確立し、その知見を基盤に新規のHCV感染モデル動物の構築を試みる研究を行い、下記の成果を得た。
(1) マウス人工肝細胞の樹立、培養、in vitroでの形質解析(東・柿沼)研究グループはマウス肝臓から高速セルソーターを用いて初代肝幹・前駆細胞を分離・濃縮し、分化誘導するとともにその形質を解析した。その結果、Wnt5aが門脈周囲の肝幹・前駆細胞による胆管形成を抑制的に制御し、正常に進行させるために重要な因子であること、さらに肝幹・前駆細胞におけるWnt5aの標的分子がCaMKIIである可能性をそれぞれ初めて示し、胆管形成に係わる新たなメカニズムを提示した(Hepatology 2013, in press)。さらにマウス線維芽細胞からHNF4α及びFoxa3の強制発現によって人工肝細胞を誘導するとともにその形質を分子生物学的に解析した。
(2) マウス人工肝細胞を用いた移植モデルの開発(東・柿沼):我々は移植した初代肝細胞・初代肝幹細胞によって、高度のドナーキメリズムが得られる細胞移植系を独自に開発した。さらに本移植系を用いて移植後のドナーキメリズムを定量的に評価・追跡できる移植系の構築に成功した。
(3) ヒトHCV receptor強制発現によるマウス人工肝細胞を用いたHCV感染モデルの構築(東・柿沼・渡辺)人工肝細胞にヒトCD81遺伝子及びヒトoccludin遺伝子の強制発現を行うことで、移植系がヒトHCV receptor強制発現人工肝細胞にも応用可能であるか検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)マウス肝幹・前駆細胞の形質解析については、想定通りの進捗を得た。すなわち、その結果をまとめた論文が
肝臓病学で最も難易度の高い国際学術雑誌:Hepatology に採択され発表することができた。本論文の結果は、Wnt5aが門脈周囲の肝幹・前駆細胞による胆管形成を抑制的に制御し、正常に進行させるために重要な因子であること、さらに肝幹・前駆細胞におけるWnt5aの標的分子がCaMKIIである可能性をそれぞれ世界で初めて示し、胆管形成に係わる新たなメカニズムを提示したと言える。並行して、マウス線維芽細胞からHNF4α及びFoxa3の強制発現によって人工肝細胞を誘導する系では、肝細胞系譜特異的な遺伝子発現が得られたため、次の段階に進んだ。
次に(2).マウス人工肝細胞を用いた移植モデルの開発については、詳細な条件検討を行い、肝幹・前駆細胞などドナー細胞にMMP2の強制発現を行うことで移植効率が改善するところまでは解明できた。この結果をもとに次年度はさらに研究を進行させる予定である。
(3) ヒトHCV receptor強制発現によるマウス人工肝細胞を用いたHCV感染モデルの構築については、ヒトCD81遺伝子及びヒトoccludin遺伝子の強制発現系を構築しているところである。
いずれも順当な進行がみられるが、次年度も継続して計画を進行させる必要がある。

今後の研究の推進方策

前記の(1)-(3)に関しては平成24年度の結果に基づき、さらにこれを継続して遂行する。
特に、ヒトHCV receptor強制発現によるマウス人工肝細胞を用いたHCV感染モデルの構築については重点的に計画を進行させる予定である。
(4) ヒト人工肝細胞誘導法の検討:マウス人工肝細胞誘導の際に行われたのと同様の手法で、肝幹・前駆細胞の発生に決定的な役割を有する数種類の転写因子を強制発現するLentiviral vector及びRetroviral vectorを構築した上で、ヒト線維芽細胞株(細胞バンクより入手可能なものを用いる)に対して強制発現する。マウスで得られた結果を基盤に、誘導を効率化するため、成熟肝細胞特異的な遺伝子プロモーターの支配下にEGFPなどを発現するレポーターを用いることで、誘導された細胞をFACSで選択・純化して用いることを計画している。
(5) ヒト人工肝細胞を用いた移植モデルの開発:前述の(1)-(4)によって得られた研究結果を基盤に、ヒト線維芽細胞から誘導したヒト人工肝細胞を用いたマウス肝臓置換動物モデルの構築を図る。系が確立された後には、置換率とヒトアルブミン血中濃度の相関を見ることによって、犠死させない状態で置換率を推測し、HCV感染に利用できる動物か否かを検討したい。

次年度の研究費の使用計画

前記(1)-(3)に関しては平成24年度の結果に基づき、さらにこれを継続して遂行する。
さらに以下の計画を推進する。
(4) ヒト人工肝細胞誘導法の検討(東・柿沼):マウス人工肝細胞誘導の際に行われたのと同様の手法で、肝幹・前駆細胞の発生に決定的な役割を有する数種類の転写因子を強制発現するLentiviral vector及びRetroviral vectorを構築した上で、ヒト線維芽細胞株(細胞バンクより入手可能なものを用いる)に対して強制発現する。マウスで得られた結果を基盤に、誘導を効率化するため、成熟肝細胞特異的な遺伝子プロモーターの支配下にEGFPなどを発現するレポーターを用いることで、誘導された細胞をFACSで選択・純化して用いる。
(5) ヒト人工肝細胞を用いた移植モデルの開発(東・柿沼・渡辺):前述の(1)-(4)によって得られた研究結果を基盤に、ヒト線維芽細胞から誘導したヒト人工肝細胞を用いたマウス肝臓置換動物モデルの構築を図る。具体的にはNOD/SCIDマウス或いはNOGマウスをレシピエントとして、前述のレトロルシン反復投与及び部分肝切除の前処理を組み合わせ、ヒト人工肝細胞による高率置換動物モデルの構築を図る。系が確立された後には、置換率とヒトアルブミン血中濃度の相関を見ることによって、犠死させない状態で置換率を推測し、HCV感染に利用できる動物か否かを検討する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Wnt5a signaling mediates biliary differentiation of fetal hepatic stem/progenitor cells in mice2013

    • 著者名/発表者名
      Kiyohashi K, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M, et al.
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1002/hep.26293

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hepatitis C virus NS4B protein targets STING and abrogates RIG-I-mediated type-I interferon-dependent innate immunity.2013

    • 著者名/発表者名
      Nitta S, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M, et al.
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: 57 ページ: 46-58

    • DOI

      10.1002/hep.26017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Association of ITPA gene variant and serum ribavirin concentration with blood cells decline in pegylated interferon-alfa plus ribavirin therapy for chronic hepatitis C2013

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Watanabe M, et al.
    • 雑誌名

      Hepatol Int

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 多血性肝細胞癌の検出能に関するGd-EOB-DTPA造影MRIとCTAP/CTHAとの比較検討2013

    • 著者名/発表者名
      東 正新、柿沼 晴、渡辺 守、他
    • 雑誌名

      医学と薬学

      巻: 69 ページ: 64-66

  • [雑誌論文] Identification of novel N-(morpholine-4-carbonyloxy) amidine compounds as potent inhibitors against hepatitis C virus replication.2012

    • 著者名/発表者名
      Kusano-Kitazume A, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M, et al.
    • 雑誌名

      Antimicrob Agent Chemother

      巻: 56 ページ: 1315-23

    • DOI

      10.1128/AAC.05764-11

    • 査読あり
  • [学会発表] EOB-MRIおよびAngio-CTによる多血性肝細胞癌に関する検討

    • 著者名/発表者名
      東 正新、柿沼 晴、渡辺 守、他
    • 学会等名
      第48回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      金沢
  • [学会発表] 4個以上の多発肝細胞癌に対するラジオ波熱焼灼術の適応と意義の検討

    • 著者名/発表者名
      東 正新、渡辺 守、他
    • 学会等名
      第39回日本肝臓学会東部会
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] Wnt5a-CaMK2経路によるマウス肝幹/前駆細胞の胆管形成の調節

    • 著者名/発表者名
      幾世橋 佳、柿沼 晴、東 正新、渡辺 守、他
    • 学会等名
      第48回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      金沢
  • [学会発表] Antiviral effetcts and action mechanisms of novel N-(morpholine-4-carbonyloxy) amidine compounds against hepatitis C virus

    • 著者名/発表者名
      Kusano-Kitazume A, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M, et al.
    • 学会等名
      63rd Annual Meeting of American Association for the Study of Liver Diseases
    • 発表場所
      Boston
  • [学会発表] Impaired IL28B gene induction and poor IL28B promoter activity influenced by the IL28B minor allele are closely associated with a null response to interferon in chronic hepatitis C patients.

    • 著者名/発表者名
      Asahina Y, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M, et al.
    • 学会等名
      63rd Annual Meeting of American Association for the Study of Liver Diseases
    • 発表場所
      Boston

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公開日: 2014-07-24  

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