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2013 年度 実施状況報告書

ハイドロダイナミック力を用いた肝ミトコンドリアへの遺伝子導入システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24590961
研究機関新潟大学

研究代表者

須田 剛士  新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10361916)

研究分担者 尾田 雅文  新潟大学, 産学地域連携推進機構, 教授 (80372473)
キーワード遺伝子治療 / ミトコンドリア / ハイドロダイナミック
研究概要

平成25年度は、Mitochondria localization signal(MLS)とMitochondrial transcriptional factor A(TFAM)の融合タンパクを発現するプラスミドのクローニングと、融合タンパクとリポーター遺伝子搭載ミトコンドリア特異的発現ベクターとの複合体形成を損なわずに細胞内へと送達させるための、より物理的ストレスの少ないハイドロダイナミック導入法(HD)の開発を進めました。
MLSとして染色体17番にコードされているsuperoxide dismutase 2(SOD2)を採用し、pE-SUMO3ベクターにSOD2と、その下流にTFAMを現在クローニング中です。TFAMは反復配列を含みPCRでの増幅が困難なため、SOD2とTFAM全体の配列を人工的に合成し、クローニングします。
また今後は、融合タンパクと平成24年度にクローニングしたミトコンドリアに特異的な発現を示すpMitGFP、pMitGFP2、あるいはpMitDsRedE2との複合体をHDで細胞内に導入し、MLSの活性でミトコンドリアへの転移を試みる予定ですが、HDの急速な注入による複合体の解離が危惧されます。このため、より低速の注入要件で細胞内送達を担保する新規のHD(neoHD)の開発が必要となり、すでに申請者らは、neoHDの条件をほぼ確立しました。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の研究目標は、MLSとTFAMの融合タンパクの作製と、neo HDの確立でした。
これまでにMLSとして作用するSOD2をPCRで増幅しクローニングしましたが、TFAMは反復配列の存在が問題と考えられ、PCRでの増幅が困難でクローニングには至っていません。この点に関しては、残念ながら当初、平成25年度に予定した目標を達成することはできませんでした。また、複合体形成が達成されなかったため、平成25年度はラットへの導入機を用いたHDを実施しませんでした。
一方、neo HDの確立に関しては、特筆すべき結果が得られました。すなわち、HDは大量の生理食塩水を急速静注することで細胞膜に一過性の欠損を生じさせる、極めて物理的なインパクトの強い方法であり、TFAMとpMitGFP、pMitGFP2、あるいはpMitDsRedE2に含まれるD-loop配列間の複合体形成を解離させる可能性があるため、本年度は、注入速度を減じることで物理的なインパクトを低下させながらも、細胞内への送達効率を維持するHDの条件決定を進めました。その結果、通常は20gのマウスの尾状脈より約2mLの生理食塩水を5秒間で急速静注することにより得られるHDの細胞内送達効率を、半量の1mLを5秒間で注入することでも同等の送達効率を達成することに成功しました。本件に関しては現在、特願の申請準備を進めており、知的財産保護の観点から詳細な情報を提示できません。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、最初に、25年度に達成できなかった融合タンパクとリポータープラスミドとの複合体形成を行います。現在、SOD2の下流にTFAMをタンデムに配したDNAを人工合成しており、今後pE-SUMO3にクローニングし、発現した融合タンパクであるSOD2-TFAMをヒスチジンタグで精製した後にタグを切り出し、pMitGFP、pMitGFP2、あるいはpMitDsRedE2と複合体を形成させます。
申請者らのこれまでの研究から、neo HDによる物理的なインパクトは通常のHDに比較し格段に低下しており、リポータープラスミドと融合タンパクを複合体の形で細胞質内へと送達できる可能性は極めて高いことが期待されます。ただし、送達されたリポーター遺伝子のミトコンドリア特異的な遺伝子発現の確認方法として、当初はリアルタイム定量RT-PCR、蛍光顕微鏡を主に想定していましたが、ミトコンドリアでの発現頻度は予想以上に低頻度であることが予想されるため、より詳細な顕微鏡下での観察を行うために、平成26年度は、共焦点顕微鏡、ならびに二光子顕微鏡を用いた評価も実施していく予定です。
また平成26年度は、ラットとマウスの異種間でのMit自体の導入も含めて、ラット肝臓を対象とした局所的なHDによる導入を実施する予定であり、HDシステムの更なる改良を継続します。

次年度の研究費の使用計画

当初、平成25年度にはHDシステムを用いたラットで遺伝子導入を予定していましたが、必要な遺伝子のクローニングとリポータープラスミドの作製が終了しなかったため、ラットへのHDシステムを用いた遺伝子導入は実施しませんでした。このため、HDシステムの維持・管理、改善を目的として計上していた費用を平成26年度での使用額として持ち越させていただきました。
平成26年度の研究費は、融合タンパクの調整、タンパク精製キット、in vitro導入実験のための細胞系列、Mitの単離キット、単離Mitの活動性評価に必要なELISA試薬などの購入、neo HDの更なる条件解析、HD導入システムの構成と改善に必要な費用、ならびに研究結果の発表に必要な旅費などに充当する予定です。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 新規ハイドロダイナミック遺伝子導入システムの確立と有用性の検証2013

    • 著者名/発表者名
      横尾健、上村顕也、須田剛士、兼藤努、尾田雅文、田村康、高村昌昭、五十嵐正人、川合弘一、山際訓、野本実、D.Liu、青柳豊
    • 学会等名
      第21回日本消化器病関連週間
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20131009-20131009
  • [学会発表] Image-guided, Hydrodynamic Gene and Cell Delivery through the Liver: Toward Clinical Applications.2013

    • 著者名/発表者名
      Kenya Kamimura, Takeshi Suda, and Yutaka Aoyagi
    • 学会等名
      第21回日本消化器病関連週間
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20131009-20131009
  • [学会発表] ハイドロダイナミック遺伝子導入法の臨床応用へ向けて ―医工連携による日本発のハイドロダイナミック遺伝子導入システムの開発―2013

    • 著者名/発表者名
      上村顕也、須田剛士、兼藤 努、横尾 健、Liu Dexi、青柳 豊
    • 学会等名
      第29回日本DDS学会
    • 発表場所
      京都市
    • 年月日
      20130704-20130704
  • [学会発表] Hydrodynamics-based, Liver-targeted Nonviral Gene Therapy Approach for Monogenic Diseases.2013

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Suda, Takeshi Yokoo, Kenya Kamimura, Tsutomu Kanefuji, Masafumi Oda, Guisheng Zhang, Dexi Liu, and Yutaka Aoyagi
    • 学会等名
      第48回欧州肝臓学会総会
    • 発表場所
      Amsterdam, Nederland
    • 年月日
      20130426-20130426
  • [図書] Advanced Textbook on Gene Transfer, Gene Therapy, and Genetic Pharmacology2014

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Suda, Kenya Kamimura, Guisheng Zhang and Dexi Liu
    • 総ページ数
      544
    • 出版者
      Imperial College Press

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公開日: 2015-05-28  

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