研究課題/領域番号 |
24590962
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
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研究分担者 |
山際 訓 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10419327)
高村 昌昭 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (20422602)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子標的薬 / 肝がん |
研究概要 |
【概要】本研究の目的は、肝がん治療薬ソラフェニブ(チロシンキナーゼ阻害薬)の奏功率を、安全かつ効率に向上しえる併用療法の開発である。本課題の特徴は、①癌周囲の肝組織(慢性肝炎・肝硬変)が産生するサイトカインTGF-beta (transforming growth factor-beta)の干渉シグナルに着目し、②申請者らが予備的検討で見いだした、“p38 MAPK (mitogen-activated protein kinase)はソラフェニブの強力な阻害因子である”という発見を指標に、③既存の医薬品を用いた併用療法を確立する、という一連の構想の下、実験を行った。 【成果】① ソラフェニブ処理細胞を詳細に検討した結果、本剤は、低用量でオートファジーを誘導して、その結果、TGF-betaシグナル因子であるsmad2を活性化することが明らかになった。またこの現象を介して、低用量ソラフェニブ処理されたがん細胞が、転移能を獲得することも明らかになった。これらの結果は、本剤に難治性の症例では、逆にがん細胞の転移頻度が増加するリスクを抱えていることを意味しており、オートファジーの観点にたった臨床対応が必要であることを明らかにできた。 ② ソラフェニブと、どのような薬剤を併用すればもっとも効果が改善できるかについては、現時点ではヒストンデアセラーゼ阻害剤バルプロ酸が有望であることが明らかになった。さらに有効な併用剤がある可能性について、薬剤スクリーニングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的である、ソラフェニブとの併用が有用な薬剤を探索する目的は達成することができた。したがって現段階では、研究目的を満たす成果が得られたこと、研究計画が当初の方針から外れないで施行可能であることから、概ね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、ソラフェニブとの有用な併用剤の候補(ヒストンデアセチラーゼ阻害剤)を、さらに探索する予定である。具体的には、これまでに申請者らが、薬剤耐性と深く関与することを見いだした、p38MAPKの活性化(リン酸化)を指標に、既存の薬剤と低用量ソラフェニブを組み合わせた併用療法を模索している。次年度は、さらに多くの医薬を調べて、p38MAPKを抑制してソラフェニブを増強できる候補をさらに探したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ソラフェニブとの併用薬のスクリーニングを簡便・正確に行う目的で、蛍光プレートリーダーを購入予定である。また、次年度においては、得られた研究成果を積極的に国内・国外の研究会や学会で発表する予定である。
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