研究課題/領域番号 |
24590962
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
|
研究分担者 |
山際 訓 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10419327)
高村 昌昭 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (20422602)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
|
キーワード | sorafenib / hepatocellular carcinoma / drug resistance / TGF-beta |
研究概要 |
【研究の背景・目的】ソラフェニブ (sorafenib)は、現在、進行性肝がんに対する効果が唯一認められている、分子標的薬である。本剤は、手術不能ながん患者の平均余命を約3か月延長できることが確認されているが、患者側の心境を考慮すると、未だ満足できる治療法とは言い難い。そこで本研究は、sorafenibの薬理効果に対して、何らかのサイトカインが干渉している可能性を模索し、その対策について培養・動物実験を用いて検討してきた。 【これまでの研究成果】sorafenib処理細胞のシグナル経路をWestern blot解析で詳細に調べた結果、同剤の抗がん剤作用は、サイトカインの一種であるTGF-betaによって著明に阻害されることを見いだした。TGF-betaは、がん細胞におけるERK, Aktシグナル経路を活性化するために、soraenib薬剤効果が減弱してしまうことが、MTTアッセイ、Western blottingで示された。そこでERK, Aktの活性化を抑えることができる薬剤を模索した結果、TGF-betaによる薬剤阻害作用が、てんかん治療薬のひとつvalproic acidによって抑制することが可能であることを見いだした。sorafenibとvlproic acidを併用して肝がん細胞を処理した結果、TGF-beta存在下でも効果的にがん細胞を治療することが可能であったことから、sorafenib + valproic acid併用療法が、治療困難ながん患者に有用な手段である可能性が示唆された(2013: 欧州消化器病学会口演発表; 2014: International Journal of clinical & experimental pathology in press)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
① sorafenib薬剤耐性メカニズムの発見: これまで、sorafenibの薬剤耐性のメカニズムに関する研究報告は多くなされてきたが、サイトカインによる干渉作用に着目した研究はない。本研究は、この分野で最初に、”肝がんの薬剤の効果が、サイトカインによって影響される”ことを明らかにして、その具体的な対策も見いだすことがかのうになった。薬剤効果の低い抗がん剤に対する併用療法の有用性を明らかにできたことから、近い将来、治療困難ながん患者の延命に寄与しえる、具体的な研究成果が得られたものと考える。 ② 医療現場への貢献の可能性の提唱: 現在、抗がん剤の併用療法は、患者に実際に投与しながら効果を判定する臨床試験・治験の経験を基に行われている。本研究は、保健適応可能な様々な薬剤を、抗がん剤と併用すると、思いがけない治療効果の増強が得られることを明示して、今後の臨床研究に十分貢献し得るデータを報告できたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
① in vivo実験の遂行: これまでの本研究の成果により、sorafenib + valproic acid(抗てんかん薬)併用療法が肝がんに対して強い効果を示すことが明らかになった。今後は、動物実験を遂行して、薬剤の投与間隔・量を検討し、臨床応用可能な、安全かつ高い効果をもつ治療プロトコールを確立する予定である。 ② より効果の高いsorafenib併用療法も模索: valproic acid以外にも、他に有用な治療薬の候補を、Western blot/MTTアッセイを用いて検討する。
|