1.症例の選定,肝組織と末梢血の採取,臨床データ・治療経過のまとめ 生体肝移植後の肝細胞癌症例および肝細胞癌非合併肝硬変症例について適切に肝生検組織と末梢血の採取を行い,研究に使用するとともに,肝細胞癌再発の有無などの経過観察を実施した。また,対照群として移植施行例以外の肝細胞癌症例と肝細胞癌非合併ウイルス性肝硬変症例についての検討も実施した。 2.NK細胞レセプターや細胞傷害性リガンド,サイトカイン・ケモカインレセプター発現の網羅的解析 フローサイトメトリーと免疫組織染色によりNK細胞レセプターと活性化マーカー,ケモカインレセプターなどの分子に関して,末梢血と肝組織を用いた解析を実施した。また,NK細胞と同じ自然免疫担当細胞として,肝臓に多く局在しているmucosal-associated T cells (MAIT細胞)にも着目し頻度や分布などの検討も行った。肝細胞癌症例における変化は確認されていないものの,肝細胞癌非合併ウイルス性肝炎症例においては肝内MAIT細胞比率は転移性肝癌症例の非癌部肝臓と比較して増加しており,活性化レセプター発現も増加している一方で,MAIT細胞の活性化に重要なインターロイキン7の受容体発現は低下していることを確認した。 3.血清中の可溶型NK細胞レセプターリガンドの測定とin vitroにおける肝細胞癌株におけるNK細胞レセプターリガンド発現の解析 NK細胞機能に関与する可溶型NK細胞レセプターリガンド(sMICA)につて,肝細胞癌症例では血清中に増加し,肝切除後には減少する一方で,肝切除後の高値が持続する症例において再発との関連について継続して経過観察中である。in vitroでは肝癌細胞株に対するインターフェロン添加によりリガンド発現の上昇とNK細胞活性上昇を確認した。
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