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2013 年度 実施状況報告書

次世代シークエンサーによるHCVゲノム解析と薬剤耐性機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24590964
研究機関山梨大学

研究代表者

坂本 穣  山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60324191)

キーワードC型肝炎 / 遺伝子変異 / 薬剤耐性変異 / 次世代シーケンサー / quasispecies
研究概要

C型肝炎の治療法はインターフェロン(IFN)・リバビリン(Ribavirin:RBV)に加えC型肝炎ウイルス(Hepatits C virus; HCV)に直接作用するDAAs(Direct Actng Antivirus)の開発が進んでいる。とくにNS3-4 protease阻害剤であるTalaprevirやSimeprevirはPEG-IFN、RBVとの併用で用いられるようになったが、その治療効果はPEG-IFN+RBV療法と同様、HCV遺伝子変異が関連することが明らかになった。とくにNS5A遺伝子内のインターフェロン感受性決定領域(Interferon Sensitivity Determining Region, ISDR)、インターフェロン・リバビリン耐性決定領域(Interferon-ribavirin resistsnse determining region)の変異のみならずCore領域の変異(R70Q)が関与していることが臨床的に明らかになっているが、この変異は上記DAA製剤の治療効果とも関連することが指摘されている。さらにCoreアミノ酸変異は、宿主のインターフェロンの感受性を規定するIL28B SNPとも関連することが指摘されており、HCVの遺伝子変異が宿主とインターフェロン感受性とも何らかの関連があることが推測されている。さらにDAAに対するHCVの薬剤耐性変異は、IFN感受性が劣る株に出現しやすいこと、DAA未治療例にも自然獲得耐性変異が存在することがこれまでの研究で明らかになり、しかもこれらは宿主内では変異体の集合(quasispecies)であることを明らかにした。したがってウイルス変異や薬剤耐性変異の存在がPEG-IFN+RBVまるいはDAA治療の治療効果と密接に関連することが本研究で明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、HCV薬剤耐性機構の解明にあるが、次世代シーケンサーを用いて、これまで知られていなかった、変異体の集合状態(quasispecies)の状態が、C型肝炎に対する治療効果と密接に関連することを明らかにできた。またこの変異は薬剤耐性変異とも関連して使用可能となったDAAを用いた治療においても明らかになった。今後は順次、作用機序の異なるDAAが使用可能となり、これらに対しても治療効果との関連を検証できるような研究体制が整っており、研究計画は概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後は、DAAを用いた症例でHCV遺伝子変異の網羅的解析と分子機構の解明をおこなう。すなわち、臨床的には、2011年末から開始しているPEG-IFN+RBV+DAA併用治療によるHCV遺伝子変異の出現と治療効果につき検討し、薬剤耐性変異の出現とウイルス増殖・治療効果
の関連について、次世代シーケンサーを用いて解析する。とくに本年度までに実施すみのISDR/IRRDR、Coreアミノ酸変異とこの変異体の集合状況(quasispecies)と変異率について、次世代シーケンサーを用いて高速かつ詳細に検討することが可能となった。
さらに、HCVレプリコンを用いて、これら遺伝子変異や薬剤耐性変異がHCV増殖能に関わる影響についての検討を行う。すなわち遺伝子変異を有するHCVレプリコンを作成し、遺伝子変異、薬剤耐性変異とウイルス増殖能・病態との関連を明らかにする。
また、臨床的に、インターフェロン・リバビリン・DAAが無効であった患者血清から得られたHCVを用いて、このHCV遺伝子をレプリコン化して、in vitroでの治療反応性を検討、薬剤抵抗性HCV遺伝子の特徴と機能を明らかにすることを計画している。とくに、インターフェロン治療効果は、上記のHCV増殖能のほかにHCV遺伝子型によっても規定されていることからHCV遺伝子型の相違によるウイルス増殖能およびインターフェロン反応性を検討する。さらに、臨床的にインターフェロン耐性を示すISDR野生型のNS5A蛋白、インターフェロン感受性を呈するISDR変異型NS5A蛋白のHCVレプリコン増殖に対する作用やインターフェロンに対する反応性をも解析する。
なお、本研究に必要な物品費はすべて消耗品類の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 線維化進展例に対する3剤併用療法2014

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、榎本信幸
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 249 ページ: 237-241

  • [雑誌論文] Model incorporating the ITPA genotype identifies patients at high risk of anemia and treatment failure with pegylated-interferon plus ribavirin therapy for chronic hepatitis C2013

    • 著者名/発表者名
      Kurosaki M, Tanaka Y, Nishida N, Sakamoto N, Enomoto N, Matsuura K, Asahina Y, Nakagawa M, Watanabe M, Sakamoto M, Maekawa S, Tokunaga K, Mizokami M, Izumi N.
    • 雑誌名

      J Med Virol.

      巻: 85 ページ: 449-458

    • DOI

      10.1002/jmv.23497

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deep-Sequencing Analysis of the Association between the Quasispecies Nature of the Hepatitis C Virus Core Region and Disease Progression.2013

    • 著者名/発表者名
      Miura M, Maekawa S, Takano S, Komatsu N, Tatsumi A, Asakawa Y, Shindo K, Amemiya F, Nakayama Y, Inoue T, Sakamoto M, Yamashita A, Moriishi K, Enomoto N.
    • 雑誌名

      J. Virol.

      巻: 87 ページ: 12541-12551

    • DOI

      10.1128/JVI.00826-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ウイルス変異と宿主ゲノムからみたインターフェロン療法の治療成績と発癌リスクを考慮した新規治療法への展望2013

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、榎本信幸
    • 雑誌名

      消化器内科

      巻: 56 ページ: 437-442

  • [雑誌論文] 発癌リスクと治療反応性を考慮したC型肝炎の最新治療2013

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、榎本信幸
    • 雑誌名

      消化器内科

      巻: 57 ページ: 379-384

  • [雑誌論文] プロテアーゼ阻害剤に対する耐性変異と意義2013

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、榎本信幸
    • 雑誌名

      肝胆膵

      巻: 67 ページ: 893-898

  • [学会発表] 発癌リスクと治療反応性を考慮した最新のC型肝炎治療、第49回日本肝臓学会総会

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、前川伸哉、榎本信幸
    • 学会等名
      第49回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京都新宿区)
  • [学会発表] 次世代シークエンサーを用いたNS5A阻害剤耐性変異の検討

    • 著者名/発表者名
      三浦美香、前川伸哉、高野伸一、小松信俊、辰巳明久、進藤邦明、雨宮史武、中山康弘、井上泰輔、坂本穣、榎本信幸
    • 学会等名
      第49回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京都新宿区)
  • [学会発表] 次世代deep sequencerを用いたTelaprevir耐性変異株の検討

    • 著者名/発表者名
      辰巳明久、前川伸哉、三浦美香、小松信俊、田中佳祐、津久井雄也、佐藤光明、雨宮史武、進藤邦明、中山康弘、井上泰輔、坂本穣、榎本信幸
    • 学会等名
      第23回抗ウイルス療法研究会
    • 発表場所
      リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)
  • [学会発表] 発癌リスクと宿主・ウイルス遺伝子からみたC型肝炎治療

    • 著者名/発表者名
      坂本穣、前川伸哉、榎本信幸
    • 学会等名
      第17回日本肝臓学会大会(JDDW)
    • 発表場所
      グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)
  • [学会発表] 次世代シークエンサーを用いたHCV NS5A阻害剤耐性変異の検討

    • 著者名/発表者名
      三浦美香、前川伸哉、高野伸一、小松信俊、辰巳明久、雨宮史武、中山康弘、井上泰輔、坂本穣、榎本信幸
    • 学会等名
      第17回日本肝臓学会大会(JDDW)
    • 発表場所
      グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)

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公開日: 2015-05-28  

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