研究課題
C型肝炎の治療法はインターフェロン(IFN)・リバビリン(Ribavirin:RBV)に加えC型肝炎ウイルス(Hepatits C virus; HCV)に直接作用するDAAs(Direct Actng Antivirus)の開発が進んでいる。とくにNS3-4 protease阻害剤であるTalaprevirやSimeprevirはPEG-IFN、RBVとの併用で用いられるようになったが、その治療効果はPEG-IFN+RBV療法と同様、HCV遺伝子変異が関連することが明らかになった。とくにNS5A遺伝子内のインターフェロン感受性決定領域(Interferon Sensitivity Determining Region, ISDR)、インターフェロン・リバビリン耐性決定領域(Interferon-ribavirin resistsnse determining region)の変異のみならずCore領域の変異(R70Q)が関与していることが臨床的に明らかになっているが、この変異は上記DAA製剤の治療効果とも関連することが指摘されている。さらにCoreアミノ酸変異は、宿主のインターフェロンの感受性を規定するIL28B SNPとも関連することが指摘されており、HCVの遺伝子変異が宿主とインターフェロン感受性とも何らかの関連があることが推測されている。さらにDAAに対するHCVの薬剤耐性変異は、IFN感受性が劣る株に出現しやすいこと、DAA未治療例にも自然獲得耐性変異が存在することがこれまでの研究で明らかになり、しかもこれらは宿主内では変異体の集合(quasispecies)であることを明らかにした。したがってウイルス変異や薬剤耐性変異の存在がPEG-IFN+RBVまるいはDAA治療の治療効果と密接に関連することが本研究で明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、HCV薬剤耐性機構の解明にあるが、次世代シーケンサーを用いて、これまで知られていなかった、変異体の集合状態(quasispecies)の状態が、C型肝炎に対する治療効果と密接に関連することを明らかにできた。またこの変異は薬剤耐性変異とも関連して使用可能となったDAAを用いた治療においても明らかになった。今後は順次、作用機序の異なるDAAが使用可能となり、これらに対しても治療効果との関連を検証できるような研究体制が整っており、研究計画は概ね順調に進展している。
今後は、DAAを用いた症例でHCV遺伝子変異の網羅的解析と分子機構の解明をおこなう。すなわち、臨床的には、2011年末から開始しているPEG-IFN+RBV+DAA併用治療によるHCV遺伝子変異の出現と治療効果につき検討し、薬剤耐性変異の出現とウイルス増殖・治療効果の関連について、次世代シーケンサーを用いて解析する。とくに本年度までに実施すみのISDR/IRRDR、Coreアミノ酸変異とこの変異体の集合状況(quasispecies)と変異率について、次世代シーケンサーを用いて高速かつ詳細に検討することが可能となった。さらに、HCVレプリコンを用いて、これら遺伝子変異や薬剤耐性変異がHCV増殖能に関わる影響についての検討を行う。すなわち遺伝子変異を有するHCVレプリコンを作成し、遺伝子変異、薬剤耐性変異とウイルス増殖能・病態との関連を明らかにする。また、臨床的に、インターフェロン・リバビリン・DAAが無効であった患者血清から得られたHCVを用いて、このHCV遺伝子をレプリコン化して、in vitroでの治療反応性を検討、薬剤抵抗性HCV遺伝子の特徴と機能を明らかにすることを計画している。とくに、インターフェロン治療効果は、上記のHCV増殖能のほかにHCV遺伝子型によっても規定されていることからHCV遺伝子型の相違によるウイルス増殖能およびインターフェロン反応性を検討する。さらに、臨床的にインターフェロン耐性を示すISDR野生型のNS5A蛋白、インターフェロン感受性を呈するISDR変異型NS5A蛋白のHCVレプリコン増殖に対する作用やインターフェロンに対する反応性をも解析する。なお、本研究に必要な物品費はすべて消耗品類の購入に使用する予定である。
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