研究課題/領域番号 |
24590965
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
前川 伸哉 山梨大学, 医学工学総合研究部, 講師 (70397298)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HCV / Ultra-deep sequencing / 3者併用療法 |
研究概要 |
●ペグインターフェロン・リバビリン2者併用療法に対するHCVのnull responderに対するコア領域、NS5A-ISDR領域、NS5A-IRRDR領域のultra-deep sequencingによるquasispecies変化の検討 2者併用療法に対するHCVのnull responder(無反応例)では、最新治療であるペグインターフェロン・リバビリン・テラプレビル3者併用療法においても約7割に抵抗性となることが報告されており、2者併用療法における抵抗性の本態を明らかにすることは重要である。そこで2者併用療法を施行した症例において、インターフェロン感受性関連領域であるコア、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDRの3領域における治療開始前後超早期24時間でのquasispecies変化を検討し、残存し抵抗性と関連するHCV配列についての解明を試み、3領域のquasispeciesとその動態がわずか24時間で大きく変化することを明らかとしつつある。 ●テラプレビル耐性HCVのultra-deep sequencingによる検討 我々は今までにダイレクトシークエンスによって、テラプレビル未使用症例においても、約1割の症例においてHCVのNS3領域にテラプレビルを含むプロテアーゼ阻害剤自然耐性変異をすでに有することを報告したが、これらが実臨床においてどの程度重要なのか明らかではなかった。これらの耐性変異の臨床的意義を明らかとするため、ゲノタイプ1bHCV感染21症例3者併用療法治療前後のNS3領域についてdeep sequenceを行い、変異の頻度と臨床的意義について検討したところ、治療前には低頻度のものを含めると大多数の症例で耐性変異が混在しており、治療に伴ってさらに変異の頻度は増加することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●ペグインターフェロン・リバビリン2者併用療法に対するHCVコア、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDR領域の検討 2者併用療法におけるインターフェロン感受性関連領域であるコア、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDRの3領域において、治療開始前のquasispeciesと治療開始後の変化をultra-deep sequencingによって検討したところ、殆どの症例において領域ごとに治療感受性あるいは抵抗性と想定されるHCVが様々に混在していることを明らかとした。一方、治療開始前後でquasispeciesは大きな動態変化を示したが、その動態は各々の領域毎に大きく異なり、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDRは特定のHCV株に収束したが、コアに関しては特定のHCV株に収束しないことを明らかとした。 ●テラプレビル耐性HCVのultra-deep sequencingによる検討 驚くべきことに大半のHCVは、すでに1%以下のわずかな頻度ではあるものの、プロテアーゼ阻害剤耐性変異を既に治療導入前から有していること、また治療開始後12時間でこれらの耐性変異HCVはさらに増加することを明らかとした。一方、これらわずかの耐性HCVが混在していても、臨床的には3者併用療法には効果がある症例が大部分であった。テラプレビル耐性HCVは過去の報告からは、非耐性HCVと比較して増殖力が弱く、インターフェロン感受性は保たれていることが考えらえるため、インターフェロンの含まれる3者併用療法においては、臨床的には必ずしも大きな問題にならない可能性もあることが考えられた。しかしながら、インターフェロン耐性のキャラクターを有するHCV感染においては、これらの変異が臨床的問題に結び付く可能性もあり、さらなるけ能が必要なことも示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
●ペグインターフェロン・リバビリン2者併用療法に対するHCVコア、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDR領域の検討 上述したように、コア、NS5A-ISDR、NS5A-IRRDRの3領域において、治療開始前のquasispeciesと治療開始後の変化は各々の領域毎に大きく異なっていたが、特にNS5A-ISDRは変異数の多いHCVから変異数の少ないHCVに収束し、ISDR変異数の少ないものが抵抗性を示すことが明らかとなった。一方、NS5A-IRRDRは特定のHCV株に収束したものの、必ずしも変異数の少ないものに収束せず、またコアに関しては特定のHCV株に収束しておらず、 これら2領域の動態を臨床背景情報の得られる多数症例にて追加、検討することにより、これら2領域が治療抵抗性にどのように関与するのかさらに検討する予定である。 ●テラプレビル耐性HCVのultra-deep sequencingによる検討 上述したように、deep sequenceによって、多くのHCVはテラプレビル自然耐性を一定の頻度で有することを示したが、臨床上の重要性をさらに明らかとするために、今後宿主因子(IL28B)、ウイルス因子(コア、ISDR、IRRDR)において、インターフェロン耐性のキャラクターを有する場合においてテラプレビル耐性の出現がどのように出現するのか、deep sequenceによってさらに明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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