研究課題
C型肝炎の治療として近年新たに加わりつつあるDAA製剤は、C型肝炎に対する画期的な治療法であるが、これらの薬剤に対する耐性変異は臨床的に大きな問題である。本研究では、患者体内における変異HCVの存在と消長をultra-deep sequenceを用いて詳細に検討することにより、その臨床的意義、ならびに基礎的な機序を明らかとすることを目的としている。H25年度までに、プロテアーゼ阻害剤telaprevirを含むペグインターフェロン・リバビリンとの3剤併用療法を導入したgenotype1b HCV症例における治療前後のNS3領域のdeep sequenceを行い、治療前に多くの症例では既にtelaprevir治療前から耐性変異HCVが存在すること、しかしながらこれらの耐性変異HCVは臨床的telaprevir耐性に結びつく可能性は低いことを明らかとした。一方、ひとたび出現した臨床的なtelaprevir耐性HCVは長期にわたり、患者体内に残存する場合があること、またtelaprevir耐性HCVの出現に伴ってHCVのquasispecies構成はダイナミックに大きく変化することを明らかとした。さらにNS5A阻害剤daclatasvirにおける耐性変異についてdaclatasvir未投与のgenotype 1b症例を対象としてultra-deep sequenceによる検討を行い、daclatasvir耐性変異のひとつNS5A-Y93Hがdaclatasvir未投与でも、3割もの頻度で存在することを明らかとした。Daclatasvirは今後主流になるDAA製剤の組み合わせ治療においてキーとなる薬剤であり、実臨床において注意を喚起する結果となった。
2: おおむね順調に進展している
昨年まではDAA製剤を施行し得た症例は少なく、耐性変異HCVの臨床的意義は十分に検討できなったが、H25年度に多くの症例の最終的な治療効果が判明したため、耐性HCVの臨床的意義を十分に検討することが可能であった。特に系統樹までを含めた詳細な検討を行うことで、治療前に存在するtelaprevir耐性変異の臨床的意義が明らかとなった。一方、ひとたび出現した臨床的なtelaprevir耐性HCVは、deep sequenceを用いて検討すると、長期にわたり、患者体内に残存する場合があることを明らかとすることができた。一方、今後DAA combination治療において治療薬の要となるNS5A阻害剤daclatasvirについても自然耐性変異が多くの症例で存在することをdeep sequenceにて示すことが可能であった。
今後の研究の推進方策プロテアーゼ阻害剤として第一世代のtelaprevirに代わり、現在は第2世代のsimeprevir治療が開始されており、同薬におけるウイルス耐性変異のプロフィールはtelaprevirとは異なっている。また前述したNS5A阻害剤daclatasvir、新たなプロテアーゼ阻害剤asunaprevir、さらにNS5B阻害剤sofosbuvir等も次々に登場することが見込まれ、これらの耐性変異についてもさらにdeep sequenceによる検討を行う必要がある。一方で、これらのウイルス変異と関連して病態を形作るIL28Bを含めたヒトSNPについてもさらなる検討を加える必要がある。次年度の研究費の使用計画上述したように、deep sequenceの方法を用いて、3者併用療法に関連したウイルスquasispeciesの解析を引き続き行うため、研究費の大部分はこれを施行するための研究試薬代として使用する。一方、研究計画書に記載したように、肝疾患進展あるいは治療感受性と関連する宿主ゲノムのSNPについても検討して行く予定であり、この検査試薬代にも使う予定である。
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