研究課題/領域番号 |
24590966
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石上 雅敏 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90378042)
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研究分担者 |
後藤 秀実 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10215501)
石川 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10288508)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
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キーワード | 肝再生 / 免疫学的肝炎 / 急性肝不全モデル / 治療 |
研究概要 |
LASC(低濃度血清培養脂肪由来幹細胞)は、当初通常濃度の血清培養下においてよりもHGFの産生が有意に多いことがラットモデルにより示された。我々は当初これを、特に本邦の急性肝不全の理由として最も多いと考えられる免疫学的肝炎であるHBVトランスジェニックマウスへのCTL移入モデルへの効果の検証を目的として研究を開始した。 LASCにおいても下記に示す一定の効果は認められたものの、その効果は通常培養のASC(脂肪由来幹細胞)の方が高かったため、以後の検討を通常培養ASCにて行った。 1.In vitroにおけるASCの免疫調整効果:各種mitogenで刺激した脾臓から採取したリンパ単核球とASCを共培養。ASCとリンパ単核球の比を変えることによるリンパ単核球の増殖抑制効果を見ると、ASCの濃度性にPHA,ConAで刺激したリンパ単核球は増殖抑制効果を示したが、LPS刺激ではその抑制効果は見られなかった。またこれらの抑制効果は培養上清を加えるだけでは起こらず、細胞-細胞間の相互作用が必要であると考えられた。 2.実際の急性肝不全モデルマウスにおけるASCのin vivoでの効果を検証するため、ConA肝障害モデルマウスにおけるASC投与群と非投与群を比較検討。ConA投与8時間後においては有意にASC投与群の方がALTが低値であり、その効果は24時間後には見られなくなった。 24時間後に採取した肝組織中のmRNAを比較検討すると、ASC投与群ではIL-6,IL-10,IFN-γ,TNF-αの炎症関連サイトカインの発現低下、TGF-βの発現増強、またCD3,CD4,CD8,CD11b,CD11c等の炎症性細胞関連の表面マーカーの発現低下も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初LASCについてはラット血管炎モデルにおいて、著明な免疫調整、再生促進効果、および通常培養ASCと比べてHGF、SDF-1α等の肝再生に重要な液性因子が多いことが示されていた。またマウスにおいてもLASC作成については準備できており、通常培養ASCと比較して強い効果が期待されていた。ただ種間の違いなのか、マウスLASCにおいては一定の効果は認めたものの、ラットほどの著明なものではなく、むしろ通常培養におけるASCの方が効果を示したため、現在は通常培養ASCにて検討を行っている。 通常培養ASCにおいては、in vitroでのリンパ単核球の増殖抑制効果、およびin vivoではConA誘発による免疫学的急性肝不全モデルにおいて効果が示され、現在論文投稿準備中である。 また別の肝障害モデルとして中毒性急性肝不全モデルであるCCl4誘発急性肝不全モデルにおいても有意な肝障害抑制効果を示している。本モデルにおいても中毒性以外に肝壊死によって引き起こされる免疫反応が急性肝不全の促進因子となることも報告されており、現在そのメカニズムについて検討中である。 また、HBVトランスジェニックマウスへのHBs特異的CTL移入による急性肝不全モデルにおける効果については、CTLの成長因子であるEL-4 supのトラブル等があり、しばらくうまく機能していなかったが、この点も徐々に解決されつつあり、今後検証可能となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)マウスLASCにおけるラットLASCとの違いの検討:マウスにおいてはラットほどの明確なLASCの効果が現れておらず、またマウスASCよりも著明な効果が出ていない。その原因について検討を行っていく。また、最悪うまく行かない場合はマウスの場合は通常培養ASCの検討に切り替えていく。 (2)HBVトランスジェニックマウスモデルにおけるCTLの安定化、LASC(ASC)の免疫調整効果、肝再生促進効果:本来の主目的であるヒトの急性肝炎、肝不全に最も近いモデルである本モデルにおいて、LASC(ASC)の効果、およびメカニズムを検証していく。 (3)LASC(ASC)の急性肝不全モデルにおける汎用性の評価:現在上記到達度のパートでも述べた通り、CCl4誘発急性肝不全モデルにおいても肝障害抑制効果が示されている。今後はこのモデルにおいてもそのメカニズムを明らかにしつつ、他の肝障害モデル(P.acnes+LPS,anti-Fas等免疫学的肝炎モデルを中心に)においてもLASC(ASC)がその免疫調整作用、および肝再生促進作用に汎用性があるかどうかを検証し、臨床応用への基礎データとしていく。 (4)ラットLASCについては現在金城学院大学薬学部の那須教授と、ラットにおける自然発症脂肪肝からの肝硬変モデルによる効果の検証について共同研究の準備中である。 (5)肝再生機序の解明:特に再生の際に分化する肝細胞のソースとして(1)骨髄、(2)肝前駆細胞(Oval cellなど)、(3)成熟肝細胞の分裂、等がある。これらの起源を各種分化マーカーと共染色することで明らかにしていく。
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