研究課題/領域番号 |
24590970
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
疋田 隼人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20623044)
|
研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20397699)
|
キーワード | 肝細胞癌 |
研究概要 |
ウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎など慢性肝炎からの肝発癌は非常に高率である。一方、これら各種慢性肝炎には共通して数多くの肝細胞アポトーシスが認められる。しかし、肝細胞アポトーシスが肝発癌に与える影響は不明であった。申請者はアポトーシス抑制Bcl-2関連蛋白質であるBcl-xLあるいはMcl-1の肝細胞特異的なノックアウトが持続的な肝細胞アポトーシスを起こすことを報告している。前年度はこれらのマウスでは酸化ストレスの蓄積を伴って、高率に1年以上で肝発癌が起こることを解明した。この酸化ストレスの蓄積はNアセチルシステインの持続飲水により軽減した。一方で、Nアセチルシステインの飲水は肝細胞のアポトーシスの程度、肝再生の程度、肝線維化の程度には影響を与えなかった。しかし1年での肝発癌率を有意に抑制した。 以上より、アポトーシスの持続は代償的な肝再生や肝線維化、酸化ストレスの蓄積を誘導するが、酸化ストレスは肝発癌を誘導する1つの独立した因子であることを証明した。本研究結果は、慢性肝疾患において肝細胞の持続アポトーシスの抑制が困難である場合、すなわちALTを正常化させることができない場合は、酸化ストレスの抑制が肝発癌予防において重要であることを証明した臨床的に非常に意義が大きい成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度では肝細胞アポトーシス持続マウスモデルを用いて、アポトーシスの持続は酸化ストレスの上昇を誘導するが、この酸化ストレスの上昇は独立した肝発癌の原因であることを証明することができた。この結果は、肝細胞傷害の持続が改善できない症例に対して、肝発癌予防治療としての抗酸化治療の有用性を示したものであり、臨床上も非常に有意義であると考えている。以上の理由で本申請課題は期待以上に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24、25年度の結果をもとに、肝細胞アポトーシス持続が酸化ストレスの上昇を誘導する機序を検討する。また、肝細胞アポトーシスの持続はTNF-αの上昇を誘導することを既に報告している。次年度は肝細胞アポトーシスの持続による肝発癌に、TNF-αの上昇が以下に関与しているのかも検討する。具体的には、TNF-αのノックアウトマウスとの交配により、Mcl-1ノックアウトマウスで認められる肝発癌が変化するかを検討する。また、臨床検体を用いて、TNF-αの上昇や酸化ストレスの蓄積と肝発癌の関連を検討する。 以上の検討を総括することで、肝細胞のアポトーシスが肝発癌を誘発する機序を解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究順序を当初計画から一部を前後させて行ったことにより、一部の消耗品の購入の時期が年度を超えたため。 次年度早急に残りの研究計画遂行のため、計画していた消耗品の購入を行う。
|