研究課題
ウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎など慢性肝炎からの肝発癌は非常に高率である。一方、これら各種慢性肝炎には共通して数多くの肝細胞アポトーシスが認められる。しかし、肝細胞アポトーシスが肝発癌に与える影響は不明であった。申請者はアポトーシス抑制Bcl-2関連蛋白質であるBcl-xLあるいはMcl-1の肝細胞特異的なノックアウトが持続的な肝細胞アポトーシスを起こすことを報告している。前年度までにこれらのマウスでは酸化ストレスの蓄積を伴って、高率に1年以上で肝発癌が起こることを解明した。そこで平成26年度は腫瘍部における1塩基変異を検討した。Virmidにて解析し、1腫瘍あたり53-101個の1塩基変異を認めた。変異パターンとしてはトランスバージョンの中でC>A/G>T変異が最も多く、酸化ストレスの関与が示唆された。抗酸化剤を投与すると、このマウスにおける腫瘍発生率は低下した。次にアポトーシス刺激による酸化ストレス惹起の機構を検討した。マウス肝培養細胞にアポトーシス抑制蛋白Bcl-xLの阻害剤を投与すると、Caspase-3/7の活性とともに細胞内のReactive Oxygen Species (ROS)の上昇を認めた。また、野生型マウス肝臓からミトコンドリアを単離し、アポトーシス促進蛋白t-Bidを投与すると、cytocrome cの放出とともに上清中のROSが上昇した。一方で、Bak/Bax欠損マウス肝臓から単離したミトコンドリアでは、cytocrome cの放出や、ROSの上昇は認めなかった。以上より肝細胞アポトーシス刺激はミトコンドリアからのROS発生を増加させ、酸化ストレスの蓄積を介した肝発癌を誘導することが示唆された。
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