研究課題
基盤研究(C)
平成24年度は計画書に従い、まずヒト非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者血清126検体を用いて血清の新規糖鎖マーカーのシーズ探索を行った。24例の健常コントロール、19例の単純脂肪肝患者、107例の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者血清を用いた。以下の新治験を得た。1,血中フコシル化ハプトグロビン値を当研究室で開発したELISAキットを用いて測定したところ健常コントロールと単純脂肪肝患者では差を認めなかったがNASH患者では著明に上昇していた。2,血中フコシル化ハプトグロビン値は従来の単一血清NASH診断マーカーとして知られているcytokeratin 18 fragment(M30)より有用性が高かった。3,血中フコシル化ハプトグロビン値はNASHの特徴的な組織像である風船様肝細胞の出現頻度と強い相関関係を持っており、多変量解析の結果でも他の血中マーカーと独立して風船様肝細胞のスコアの決定因子であった。4,フコシル化の標的蛋白として我々が既に同定していたMac2 binding protein (Mac2bp)に着目し、同様に我々の開発したELISAキットを用いてNASH鑑別能について検討したところフコシル化ハプトグロビン以上に有用性の高いNASH鑑別マーカーであることがわかった。5,血中Mac2bp濃度は健常コントロールに比べ、単純脂肪肝患者で有意に高く、NASH患者ではさらに高値を示した。また線維化のステージ進展に伴い有意に上昇していった。以上の成果について現在論文投稿中である。25年度以降はさらにMac2bpのフコシル化の程度の違いがNASHの診断マーカーになるかどうかについて検討していく。またフコシル化タンパク、Mac2bpに着目して動物モデルを用いた検討を行い、フコシル化、Mac2bpのNASH進展における意義について基礎的検討を展開していきたい。
2: おおむね順調に進展している
集めたNAFLD患者血清を用いて当初予想した理論通り血中のフコシル化タンパクがNASHと単純性脂肪肝の鑑別マーカーになりうることを示すことができた。まだ症例数が少ない点、validation studyが出来ていない点については今後多施設共同研究によりさらに症例を蓄積して行っていきたい。マウス実験については現在新規アディポサイトカインsecreted frizzled related protein 5 (Sfrp5)欠損マウスを用いた実験、肝臓のフコシル化に重要なFut8の欠損マウスを用いた実験を準備中である。
ヒト検体を用いた検討については今後多施設共同研究により症例数を増やし、今回見いだした血液糖鎖マーカーがNASH鑑別マーカーとなりうるかについてvalidation studyを行っていきたい。マウス実験については作製したSfrp5 KOマウス、Fut8 KOマウスを用いての検討を行っていきたい。
ヒト検体を用いた研究については市販のELISAキットを用いて測定数を増やしていくためキット購入に費用がかかる。またマウス実験についてはマウス維持費、NASHモデルマウス実験のためのNASH誘発食餌の購入、実験の解析のためPCR関連試薬、抗体の購入、レクチンアレイなどの糖鎖解析のため研究費を使用していく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)
Hepatol Res
巻: 43 ページ: 384-93
10.1111/j.1872-034X.2012.01074.x.
巻: 43 ページ: 401-12
10.1111/j.1872-034X.2012.01082.x.
Inflamm Bowel Dis
巻: 19 ページ: 321-31
10.1097/MIB.0b013e318280eade.
Clin Chim Acta
巻: 417 ページ: 48-53
10.1016/j.cca.2012.12.014.
Glycobiology
巻: 22 ページ: 778-87
10.1093/glycob/cws012
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol
巻: 302 ページ: G773-80
10.1152/ajpgi.00324.2011
J Proteome Res
巻: 11 ページ: 2798-806
10.1021/pr201154k
巻: 43 ページ: 238-48
10.1111/j.1872-034X.2012.01066.x
BMB Rep
巻: 45 ページ: 554-9
医学と薬学
巻: 68 ページ: 435