研究課題/領域番号 |
24590973
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20397699)
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研究分担者 |
宮城 琢也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80532986)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / C型肝炎ウイルス / 抗がん剤 / 先天免疫 / 肝癌幹細胞 / 低酸素 |
研究概要 |
本研究は、C型肝炎ウイルス由来肝細胞癌および低酸素状態における肝癌細胞の細胞死と先天免疫に対する免疫修飾を評価する事を研究目的としている。初年度である本年は、C型肝炎ウイルス (HCV) 感染系の確立と、HCV感染肝癌細胞の抗がん剤耐性の評価を主に行った。肝癌細胞であるHuh7.5細胞に、感染性HCV (HCVcc) をelectroporationにて感染させ、HCV感染肝癌細胞を作製した。これら細胞あるいは親株細胞に抗がん剤であるEpirubicinを添加し、WST法にて治療抵抗性を評価した。抗がん剤添加により、肝癌細胞は濃度依存性に細胞死が起こったが、HCV感染肝癌細胞の方が生存率は有意が高く、抗がん剤に対して治療抵抗性であった。HCV感染肝癌細胞においてEpirubicin添加後のCaspaseの活性化の誘導は、有意に低かった。またEpirubicin添加後のROS産生も、HCV感染肝癌細胞の方が有意に高かった。次に抗がん剤体制に関与する薬剤排出トランスポーターの発現を、リアルタイムPCR法にて評価した。HCV感染肝癌細胞では、ABCB1およびABCG2のmRNAの発現が有意に高く、このことが治療抵抗性に関与することが示唆された。薬剤耐性の獲得は癌幹細胞の特質の1つであることから、フローサイトメトリーにて、HCV感染による肝癌細胞のside population (SP) 分画の変化を評価した。HCV感染肝癌細胞では親株肝癌細胞に比して、SP分画の有意な増加を認め、HCV感染により肝癌幹細胞の増加が示唆された。本研究結果は、肝癌においてHCVの存在が、抗がん剤抵抗性の一因となり、その過程でHCVによる肝癌幹細胞の誘導の関与を示唆する結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、C型肝炎ウイルス由来肝細胞癌および肝癌進行による低酸素状態における肝癌細胞の細胞死と、先天免疫に対する免疫修飾を評価する事を研究目的としている。本年度はC型肝炎ウイルス感染系が確立され、C型肝炎ウイルス感染肝癌細胞が抗がん剤抵抗性であることが明らかとなり、癌幹細胞との関連も示唆される結果であった。今後抗がん剤抵抗性のメカニズムの解析を継続するとともに、肝癌幹細胞との関連を明らかにする予定である。また低酸素状態におけるC型肝炎ウイルス感染肝癌細胞の抗がん剤抵抗性の評価、免疫修飾作用についても明らかにしていく予定であるが、初年度としてはその基盤となる研究結果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、C型肝炎ウイルス感染肝癌細胞の治療抵抗性獲得と肝癌幹細胞の増加との関連を明らかにし、そのメカニズムを解析する予定である。さらに低酸素下での培養を行い同様の解析を行うとともに、MICA等のNK活性化関連分子の発現の修飾とそのメカニズムについても明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大阪大学大学院医学系研究科においては、低酸素培養器も含めて研究遂行に必要な備品は既に設置されているため、新規の備品の購入の予定はない。平成25年度も本研究を推進するため、試薬等の消耗品を中心に研究費を使用する予定である。
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