研究課題/領域番号 |
24590976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀田 博 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40116249)
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研究分担者 |
勝二 郁夫 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40356241)
デン リン 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40437497)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 感染症 / 糖新生 / FoxO1 |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)は慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌等を引き起こすのみならず、2型糖尿病や脂肪肝と密接な関連があることが臨床的に知られている。我々は、HCV感染が糖新生制御因子である転写因子FoxO1のリン酸化を抑制し活性化状態を持続させること、及び活性化されたFoxO1により、糖新生律速酵素遺伝子群の転写が促進され、肝細胞の糖新生が亢進することを明らかにした。今年度は、HCV感染によるFoxO1機能の脱制御(持続的活性化)に及ぼす脱リン酸化酵素の影響について検討し、以下の結果を得た。 (1) HCV感染・複製によりMAPK phosphatase-3 (MKP3)のmRNA及びタンパク質発現が亢進した。 (2) HCV感染によるMKP3タンパク質発現上昇は、抗酸化剤NACあるいはJNK阻害剤によって解除されたことから、HCV感染によるROS/JNK経路が、MKP3発現の増加に関与することが示唆された。 (3) MKP3はFoxO1との相互作用により、FoxO1を脱リン酸化することから、MKP3がFoxO1のリン酸化状態を制御すると考えられた。 (4) HCV感染細胞におけるMKP3が細胞質に限局することから、HCV感染が細胞質におけるFoxO1の脱リン酸化反応を促進することが示唆された。 以上の結果から、HCV感染細胞においては、酸化ストレス→JNK活性化→MKP3発現亢進→FoxO1脱リン酸化→FoxO1核内蓄積(FoxO1転写活性の亢進)→PEPCK及びG6Pase遺伝子の転写促進という機序を介して、糖新生が亢進することを提唱した。これらの成果は、ウイルス感染による糖代謝異常誘導の分子機序の解明に貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でHCV感染がMAPK phosphatase-3 (MKP3)のmRNA及びタンパク質発現を促進することを介してFoxO1の脱リン酸化を惹起している可能性が明らかになった。 これらの成果は当初の計画通りであり、評価できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
プロテインホスファターゼ 2A (PP2A)がFoxO1の脱リン化酵素であることが報告されている(Yan et al., J. Biol. Chem., 2008)。予備実験により、1) 非感染細胞に比べ、HCV感染細胞におけるPP2Aのcatalytic subunit (PP2Ac)発現量の変化は見られなかった。2) HCV感染細胞において、PP2AcのY307リン酸化(不活性型)の程度が顕著に増加したが、in vitroのpNPP Phosphatase Assayにて、PP2Acの酵素活性の低下は認められなかった。これらの知見を基に、PP2AがHCV感染によるFoxO1リン酸化抑制に関与するかどうかについて解析を進める。 (1) 高い特異性を持つキットであるPP2A Immunoprecipitation Phosphatase Assay Kitを用いてHCV感染細胞におけるPP2Aの酵素活性を測定する。 (2) PP2Aの強力な阻害剤であるCantharidic Acidを用いて、HCV感染によるFoxO1リン酸化抑制が解除されるかどうかを調べる。 (3) HCV感染により、PP2A のscaffold subunit (PP2A-A)及びregulatory subunit (PP2A-B)の発現量がどのように変化するのかを調べる。 (4) PP2Acの304番目のトレオニンのリン酸化及び309番目のロイシンのメチル化はPP2Aの酵素活性に重要であることが報告されているので、HCV感染により、PP2AcのThr304のリン酸化及びLeu309のメチル化状態を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、免疫沈降やウェスタンブロッティング等を用いた解析に必要な試薬、抗体等に使用する予定である。 また、この成果を発表するために、国際及び国内学会に参加する旅費及び学術雑誌への投稿料等を計上する。
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