研究課題/領域番号 |
24590979
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
阿部 雅則 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (40432786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アディポカイン / メタボリック症候群 / 肥満 |
研究概要 |
メタボリック症候群の発症には肥満の脂肪組織における慢性炎症を基盤としたインスリン抵抗性が関与している。内臓脂肪蓄積状態においては,アディポサイトカインの産生・分泌が過剰あるいは過小となり,このバランスの破綻がメタボリックシンドロームの病態形成に関与する。われわれは、B細胞の生存、分化や活性化に関与するB細胞活性化因子(BAFF)が脂肪細胞から分泌される新規アディポカインであることを明らかにした。本年度はまず、高脂肪食誘導肥満マウス、および培養脂肪細胞株を用いて脂肪細胞からのBAFF産生機序を解析した。1)脂肪細胞に各種刺激を加えたところ、BAFF産生にはH2O2刺激が必要であり、この産生増加は抗酸化剤であるN-アセチルシステインの添加により抑制された。2)高脂肪食を投与したマウスでは血清BAFF濃度が上昇していた。また、血清BAFF濃度の上昇は酸化ストレスの指標であるMDAの血清濃度と相関していた。各臓器・組織のBAFF発現を調べたところ、高脂肪食誘導肥満マウスでは内臓脂肪組織においてBAFF発現および酸化ストレスマーカーである8-OHdG発現が増加した。以上から、肥満におけるBAFF産生増加に脂肪組織の酸化ストレスが関与していることが考えられた。次に、BAFFの脂肪細胞のサイトカイン産生に与える影響について培養脂肪細胞株を用いて検討した。BAFFはMCP-1, TNF-a, IL-6などのアディポカイン産生を誘導すること、アディポネクチンの産生を抑制することが明らかとなった。また、これらの変化はBAFF-R Fcの添加により抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた研究は順調に進行している。マウスを用いた研究もほぼ予定通り進行しており、臨床検体の収集は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪組織におけるBAFF産生機構の分子メカニズムを解析するとともに、肝細胞に対するBAFFの影響を解析する予定としている。また、マウスモデルを用いて非アルコール性脂肪性肝疾患におけるBAFFの役割を明らかにする。現在、BAFF受容体欠損マウスを用いた検討を行っており、すでに予備的な研究成果を得ている。今後は、肝臓の脂肪化、炎症、線維化、発癌を中心に解析を行っていく予定としており、アディポカインとしての生体内での役割を明確にしていく。また、臨床においても非アルコール性脂肪性肝疾患患者の血清や内臓脂肪組織の集積は順調に行われており、バイオマーカーとしての有用性も明らかにしてく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
多数のマウスを用いて非アルコール性脂肪性肝疾患におけるBAFFの役割を明らかにするとともに、各種治療に対する影響についての解析も予定している。また、分子生物学的アプローチを用いた解析も予定しているため、研究費の多くを物品費として使用する予定である。加えて、成果を発表するための旅費にも一部使用したいと考えている。
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