研究課題/領域番号 |
24590988
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渡邊 綱正 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20338528)
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研究分担者 |
菅内 文中 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20405161)
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 遺伝子多型 / IL28B / インターフェロン誘導遺伝子 / 自然免疫応答 / IFNλ / PEG-IFNα治療 |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)治療にはインターフェロン・アルファ(IFNα)製剤が使用され、感染細胞内のインターフェロン誘導遺伝子(ISGs)を介する抗ウイルス活性が重要とされる。一方、PEG-IFNα/リバビリン併用療法によるC型肝炎治療効果予測にIL28B(III型IFN であるIFNλ)の遺伝子多型(SNPs)が影響することから、HCV感染応答におけるIFNλの機能解析を目的とした。 一般にC型肝炎治療効果は、生体の自然免疫応答と獲得免疫応答の協調作業によると考えられる。生体応答を明らかとするために、獲得免疫が除去されたSCIDマウスを背景とするヒト肝細胞置換キメラマウスのHCV感染モデルを用いて自然免疫応答を検討し、さらにコラゲナーゼ潅流により単離した初代ヒト肝細胞(PHH)培養系を用いて、ヒト肝細胞内におけるIFNλ応答を検討した。 IL28B SNP major type (MA;治療有効群)及びhetero type (HE;治療抵抗群)の2系統のヒト肝細胞をSCIDマウスへ移植しHCV感染モデルを作成した後に、PEG-IFNα投与による自然免疫応答の違いを検討した。その結果、抗HCV効果と肝内ISGsには肝細胞のSNPによる差は認めなかったが、IFNλ発現量がMAで有意に高値を示した。 さらに、in vitroのPHH培養細胞系を用いてHCV感染を模倣したTLR刺激を行った結果、IFNα/β同様に産生されるIFNλが容量依存性に産生され、さらにその産生量がIL28B SNPにより異なることを見出した。 以上の実験から、HCV持続感染が成立したヒト肝細胞に対するIFNα投与、ならびにPAMP刺激を介したIFNλ産生量がIL28B SNPにより異なり、おそらくこのIFNλを介した獲得免疫応答がHCV排除に重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL28B SNPによりC型肝炎治療効果に違いが生じるメカニズムとして、HCV感染肝細胞より産生されるIFNλがkeyである可能性を独自に示した。さらに、このIFNλ応答性そのものがSNPにより異なることもin vitroの系で検討した。しかしながら、当初予定していたマウスモデルを用いた獲得免疫調節作用の検討は、マウス肝臓内でのIFN受容体発現がヒトと異なり、肝内におけるIFNλ作用がヒトとマウスで異なる可能性が明らかとなり、当初の予定を変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度新たに確立した大量調製可能なin vitroの初代ヒト肝細胞培養を用いて、HCVなどのPAMPに対するヒト肝細胞応答のメカニズムを明らかにする。さらに、ウイルス感染応答におけるIL28B SNPの意義について、転写因子などの解析を追加する予定である。 また、in vivoのHCV感染モデルを用いて、IFNα投与による肝内ISGsのみでなく、IFNλ投与による肝内ISGs誘導ならびに抗HCV効果を検証し、それぞれのIFNの作用ならびに相互干渉作用を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初は実験補助員への人件費を計上していたが、当該研究において補助員が確保できず、必要な実験も自身が実施することで、研究を遂行出来たため、予定していた人件費を利用しなかったため。 当初の計画通り、実験補助員の人件費として利用する計画である。
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