研究課題
慢性肝炎におけるinflammasomeの果たす意義を検討した。C型肝炎患者の肝生検組織中のinflammasome関連遺伝子(NLRP3,ASC,caspase-1,IL-1beta,IL-18)の発現レベルと血清中のIL-1betaやIL-18の濃度を測定した。その結果、遺伝子発現レベルは正常肝に比較して有意に高値を示し、血清サイトカインのレベルも健常者に比較して有意に高値を示していた。さらに、血清IL-18の濃度と肝炎の程度が密接に関連していることも判明した。免疫染色を行ったところ、caspase-1の活性化は主にクッパー細胞やマクロファージで起きていることが明らかになった。以上の結果より、C型肝炎ではクッパー細胞やマクロファージにおけるinflammasomeの持続的活性化が肝炎の進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)においても同様の検討を行った。NADLD患者の肝組織中のinflammasome関連遺伝子の発現レベルは正常肝に比較して有意に高値を示した。血清IL-18の濃度も健常者に比較して有意に高値を示し、肝炎の程度と密接に相関していた。免疫染色の結果より、主にマクロファージにおいてcaspase-1の活性化が確認された。以上の結果より、NAFLDにおいてもC型肝炎と同様にクッパー細胞やマクロファージにおけるinflammasomeの持続的活性化が肝炎の進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の課題である非アルコール性脂肪肝炎における新規の病態促進因子の解明としてinflamasomeに注目した。近年、inflammasomeは糖尿病やメタボリック症候群の発症に関わる重要な因子として注目されている。肝疾患においても肝炎の発症に関わる可能性が近年の報告から示唆されている。そこで、実際の症例において検討を行い、inflammasomeと肝炎の密接な関連を明らかにすることができた。したがって、現時点では当初の目的はある程度達成していると考えられる。
肝疾患におけるinflammasomeの活性化の機序と制御法について動物実験を行う。動物モデルや細胞実験によりinflammasome活性化の分子メカニズムを解析する。さらに、inflamasomeの活性化を阻害する因子を用いて肝炎の改善効果を検討する。
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