研究課題/領域番号 |
24590991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 義人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70244613)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | APG-2 / 脂肪肝炎 / 肝細胞がん / 肝炎 / 部分肝切除 |
研究概要 |
SPF化の終了したAPG-2+/-マウスの雄、雌それぞれ3匹が搬入され、早速繁殖にとりかかった。ゲノタイピング用のプライマーセットを設計し、マウスの尾から採取したgenomic DNAでノックアウトマウスの判別が可能であることを確認した上で、Apg-2ノックアウト(-/-)マウスがメンデルの法則に則って生まれることを確認した。性別もほぼ5分5分であった。しかし、4週令のApg-2-/- マウスの体重はApg-2+/- およびApg-2+/+ マウスの70%以下にとどまり、8週令ではほぼ同等に達っするものの、APG2-/-マウスの生後から特に2,3週令の間は体重低下が目立つことで、その間に周囲(母マウスを含む)からの攻撃を受け易く生存競争に不利で、3割ほどは成長せず生命を落としていることが分かった。しかし、2,3週はどうしても母乳による飼育が必要であるため別離させることができず、なるべくストレスのかからないように繁殖用の特殊な仕切りなどを設けるなどして産後ストレス軽減に努めた。その結果として徐々にノックアウトマウスの繁殖が軌道に乗り始めるようになった。以上の理由から、雄のノックアウトマウスの数の準備に予定よりも長期間を要し、次のステップであるマウスモデル作成の開始が遅れることとなった。ようやく得られたマウスから、部分肝切除モデル、高脂肪食負荷モデル、発癌モデルの作成を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要にも記載した通り、APG-2-/-の雄マウスの数が揃わず動物モデルの作成開始が遅れている。先述した以外の理由としては、APG-2-/-マウスを得るために、APG-2-/-と+/-の掛け合わせを行っているが、親側の原因として、雄のAPG-2-/-マウスは生殖能力がやや低いこと、雌のAPG-2-/-マウスは保育能力がやや低い可能性が疑われている。また、生まれてくるAPG-2-/-マウスも2,3週令まではとにかく体が小さく+/-マウスとの生存競争にやや劣るようであり、これらが原因で必要数のマウスが得られなかったと考えられる。APG-2+/-どうし(雄、雌)の掛け合わせでは、メンデルの法則に従うとAPG-2-/-は1/4の確率で生まれることとなり、雄を実験材料して使用するため、APG--/-を得る確率は1/8まで低下することから、今後もAPG-2-/-と+/-の掛け合わせを行っていく予定である。現段階では、既にCCL4モデルや部分肝切除モデル、脂肪肝炎モデルは作成済みで、肝がんモデルを作成中の予定であったが、現在ようやくモデル作成に着手し始めたばかりであり、予定としては約半年の遅れがある。発癌モデルは8か月から10か月の長期間を要するため、ある程度の段階で開始して行きながら、同時にCCL4モデルや部分肝切除モデル、脂肪肝炎モデルのサンプルを収集し解析を同時並行で行う予定とした。
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今後の研究の推進方策 |
今回、APG-2ノックアウトマウスの作成に時間がかかることが判明したため、以下の点につき対策を講じた。①スペースの関係でSPF室のマウスのケージが12ケージしかなかったが、当施設の動物舎と交渉し最大6ケージまで増やすことができ、18ケージで現在繁殖を行うことになった。結果、必要マウスを今まで以上のペースで増やしていくことが可能となった。②特に生殖能力の高いAPG-2-/-マウスの雄、雌を選び繁殖専用とするべく、これまでの繁殖用の雄、雌から可能性の高いものを選別して用いている。 サンプル解析の遂行について以下の工夫を考えている。①発癌モデルは8か月から10か月という長期モデルであるため、その間に同時進行で肝炎モデルを作成しのサンプリング、解析を行うことで時間の有効利用を行う。これを実現させるためにもノックアウトマウスの作成率上昇に努めている。②上記対策を講じても、動物モデル作成にはやはりそれなりの時間がかかるため、細胞株や肝細胞の初代培養細胞を用いてin vitroの研究も開始する。具体的には肝がん細胞株におけるAPG-2の役割を検討するために、SiRNAを用いて細胞レベルでAPG-2をノックアウトして癌細胞のアポトーシスや増殖能を検討する。また、マウスから肝細胞を単離して初代培養を行い、それらのAPG-2をノックアウトすることで脂質代謝や増殖能におけ影響を検討する。また、細胞培養や初代培養に関しては実験助手にテクニカルな面では任せることで安定した結果を得られるように工夫する。
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次年度の研究費の使用計画 |
APG-2-/-マウスを用いて、当初の予定通り、肝炎(CCL4投与)、部分肝切除、脂肪肝炎モデル(高脂肪食、高脂肪高コレステロール食)、発がん(ジエチルニトロサミンやチオアセタミド投与)を作成し、vivoでの検討を行う。得られた結果から、APG-2の肝炎、肝再生、脂肪肝炎、発がんに及ぼす影響を確定し、ヒト肝細胞がん株細胞や実際の臨床サンプルを用いた研究へ発展させる。具体的には、ヒト肝がん細胞株(Huh7, PLC/PR5, HLE)のAPG-2をSiRNAを用いてノックアウトして癌細胞の細胞周期や増殖能、アポトーシス関連遺伝子の変化を検討する。臨床サンプルではB、C型肝炎やNAFLDの肝生検、肝癌の切除標本を免疫染色して肝細胞がんにおけるAPG-2の発現と臨床パラメーターとの関連を統計学的に検討することで、ヒト肝炎、肝がんにおけるAPG-2の役割を検討する。また、APG-2はシャペロン機能を有しており、酸化ストレス応答に関与していることから、マウス肝細胞を野生型およびAPG-2-/-マウスより単離して、低酸素や脂肪酸負荷、トニカマイシン投与(ERストレス)を行い、各種ストレスに対する肝細胞の耐用能を特にヒートショック蛋白70(HSP70)との関連を中心に検討することで、脂肪肝、脂肪肝炎におけるAPG-2の役割と癌化について解析する。
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