Heat shock蛋白110ファミリーに属するApg-2はタイトジャンクション蛋白であるZO-1にZONAB(ZO-1-associated nuclear acid binding protein)と競合的に結合する。その結果、ZONABと複合体を形成するCyclinD1やCDK4複合体の核移行を促進することで細胞増殖正に制御することが報告されている。さらにヒト肝癌組織において高頻度に高発現することが報告された。そこで我々は肝癌の増殖や肝再生におけるApg-2の意義に関してマウスモデルを用いて検討を行った。まずApg-2ノックアウト(-/-)マウスを作成しメンデルの法則に則って生まれることを確認した。しかし、4週令のApg-2-/- マウスの体重はApg-2+/+ マウスの70%以下にとどまった。生後14日の雄性Apg-2+/+ マウスとApg-2-/- マウスに0.01 ml/gのジエチルニトロサミン(DEN)を0.05μ mol/g body wt を腹腔内投与し肝発癌モデルを作成し、それぞれの肝病態またはその組み合わせにおけるZO-1、ZONAB、CyclinD1やCDK4などの動態を検討した。結果、Apg-2-/- マウスにおいてDEN投与40週後の解析で明らかに肝癌腫瘍個数の減少、腫瘍径の減少が見られた。この傾向はDEN投与後に高脂肪食を投与したマウスでも明らかであり、Apg-2蛋白の肝発がんへの促進効果が確認された。その機序として肝癌におけるアポトーシスの抑制、細胞周期の正の制御が示唆され、得られたマウス検体における、TUNEL染色、抗アポトーシス蛋白や細胞増殖マーカーの免疫組織学的検討を行った。さらにヒト肝癌細胞株においてApg-2蛋白をSiRNAを用いてサイレンシングを行い、Apg-2蛋白のアポトーシス、細胞周期に及ぼす影響を検討した。結果、Apg-2の減少はHuh7やPLC/PR5細胞株において細胞増殖の低下、アポトーシスの増加をもたらすことが確認され、Apg-2-/- マウスにおけるDEN誘発肝発がんの減少の結果と一致することが確認された。
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