研究課題/領域番号 |
24590992
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
王 挺 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70416171)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Carnosic acid / Nrf2 / Oxidative stress |
研究概要 |
平成24年度では、1. CAによる酸化ストレス誘導性細胞毒性への抑制作用; 2. CA腹腔内単独投与による肝臓内Nrf2活性化の有無; 3. 肝癌細胞におけるCAの作用について検討した。結果: 1. 酸化ストレス誘導物質(staurosporine、TNFα、deoxycholate およびH2O2)は、初代培養肝細胞の生細胞数を減少した。CAを混合添加した結果, 生細胞数がいずれも有意に上昇した。CAは、SIRT1 の蛋白質レベルおよびPTENのリン酸化を誘導した。酸化ストレス誘導物質らは、JNK、ERKおよびp38 MAPKのリン酸化を促進したが、CAと混合添加の場合、JNKのリン酸化の変動が見られず、ERKのリン酸化が抑制され、p38 MAPKのリン酸化がさらに促進された。2. CA の腹腔内単独投与では、肝臓におけるNrf2全細胞タンパク質レベルが上昇傾向を示したが、核内Nrf2タンパク質レベルは、コントロールに比べ、有意差が認められなかった。また、肝組織におけるSOD及びGSHの上昇は認められなかった。3. 肝癌細胞HepG2においてCAは、SIRT1の蛋白質レベル、PTENのリン酸化およびNrf2の核内蛋白質レベルを共に促進した。考察: 1. CA は、酸化ストレス物質誘導された肝細胞毒性に対して抑制作用を持つ。このメカニーズムは、JNKではなく、ERKおよび p38 MAPKが関与していることを示唆した。2. CA は、野生マウスにおいてNrf2の活性化を誘導せず、肝癌細胞においてNrf2抗酸化ストレスシステムを活性化し、癌細胞の浸潤を抑制することを示唆した。以上の結果から、CAは、酸化ストレスと関わる環境で保護作用を発揮することが示唆された。3. CAによるSIRT1及びPTEN への影響について、CAは、寿命延長、癌治療に応用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初代培養肝細胞を用いて、CA添加 による酸化ストレス耐性の誘導実験、 Nrf2発現の誘導実験および JNK リン酸化の誘導実験など、予定通りに遂行された。 シグナル分子のBioplex スクリーニングについては、最初の仮説に基づいてJNKシグナル分子を中心に実施する予定だが、ERK, p38 MAPKシグナルがCAのシグナル伝達機構に関与している結果が得られたため、ターゲット分子リスト再作成し、Bioplex スクリーニングが次年度に延期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画: 1. CAが酸化ストレス条件下に肝細胞のNrf2システムを活性化するかどうかについて検討する。また、CAは、Nrf2を活性化させ、JNKリン酸化の抑制を介して抗酸化ストレス作用を発揮することが最初に予想されたが、今回の結果は、JNK ではなく、ERK、p38 MAPKの関与を示した。次年度は、CA による活性化されたNrf2システムとJNK活性化の関連について検討すると共に、ERK、p38 MAPKとの関与についても検討する。 2. CAは、マウス個体レベルでの種々の肝障害(肝癌、薬物やアルコール性肝炎など)を抑制するか否か、また、この抑制作用は、Nrf2システムと関連するか否かを検討する。 3. 細胞レベルでは、CAによるSIRT1、PTEN への影響とNrf2の活性化と関連があるかどうかを検討する。4. CAは、寿命延長作用の有無などマウス個体レベルで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のように、本年度は、予想と異なるデータがあったため、細胞内シグナル伝達分子のスクリーニングなどの実験が延期となった。次年度は、申請した研究費を予定通り使用するほかに、本年度のデータで示した候補ターゲット分子をスクリーニングリストに加え、検討する方針です。
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