研究課題/領域番号 |
24590992
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
王 挺 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70416171)
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キーワード | カルノシン酸 / 酸化ストレス / 細胞死 |
研究概要 |
25年度では、1. 酸化ストレス誘導性細胞毒性に対するCAの細胞保護作用; 2. 肝癌細胞生存に対するCAの作用について検討した。 <結果・成果> ①AML-12細胞および初代培養肝細胞においてCA 1μMまでの濃度では、細胞生存への影響は認められなかった。CA 1μMでは、Nrf2およびAMPKのリン酸化が検出されず、Sirt1が誘導された。②CA 1μMでは、H2O2による上昇したROSレベルおよびLDHの漏出が著明に抑制され、また、生細胞数も有意に増加した。さらに、CAは、H2O2による上昇したERK1/2のリン酸化を抑制した。③HepG2細胞の生存は10μMまでのCA添加による影響を受けなかった。一方, HuH7細胞の生存に対してCAは僅か2μMで著明な抑制作用を示した。④HuH7 細胞では、CA 添加後24時間にNrf2の核内移行が観察され、細胞内のNrf2リン酸化タンパク質レベルが上昇し、Sirt1も上昇した。また、AMPKの活性化は、2μM CAの添加で著明に増加した。対照として、HepG2細胞においてCAは、Nrf2の核内移行を誘導せず、AMPKおよびSirt1への影響も認められなかった。⑤CA によるNrf2の核内移行および細胞内のリン酸化Nrf2タンパク質レベルはSirt1阻害剤の添加によって抑制された。また、CA の抗癌細胞増殖作用がSirt1阻害剤によって阻害された。一方、AMPKの阻害剤は、CAの抗癌作用に影響を与えなかった。 以上の結果から、 CA は低濃度で、H2O2により誘導された酸化ストレスおよび細胞死を抑制することが明らかとなった。この作用は、Nrf2 シグナルを介せず、Sirt1 からMAPKへの制御によるものと推定された。一方、CAの抗癌作用は、細胞種によって効果が異なることが示唆された。 Sirt1および下流のNrf2の活性化は、CAの作用機構として重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では、CAの抗薬剤性酸化ストレス作用および抗癌作用を検証したと共に、CAの上述作用機構におけるNrf2の役割も確認した。より詳細な作用機構が解明されれば、疾病の予防・治療に応用することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
26年度では,CAの抗薬剤性酸化ストレス作用におけるSirt1及びMAPKの役割について詳しく検討する予定です。そして、上述の研究結果を踏まえて、論文を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に行ったカルノシン酸の作用機構の検討について、26年度にも確認実験及び追加実験の必要が生じた。 抗体(8万円程度)及び消耗品(2万円程度)の購入などを予定する。
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