研究実績の概要 |
我々は、平成24年度から平成25年度まで正常肝細胞におけるカルノシン酸(CA)の保護作用を検討した。CAは、H2O2による肝細胞内総活性酸素ROSの上昇及びLDHの細胞外漏出の増加、さらに肝細胞死に対して、著明な改善作用を持つことが明らかになった。また、SIRT1、ERK1/2はCA の肝細胞保護作用に関与することを示した。平成26年度では、我々はCAの保護作用の分子機構におけるSirt1及びERK1/2の役割をさらに検討した。 結果: 1. H2O2投与肝細胞では、細胞内総ROSの産生及びLDHの細胞外漏出は、 H2O2の濃度依存的に上昇し、細胞死がH2O2により誘導された。これに対して、ERKの阻害剤であるU0126の投与は、細胞内総ROSの産生、LDHの細胞外漏出、また、細胞死を抑制した。また、H2O2投与肝細胞では、ERK1/2の活性化蛋白質レベルが上昇し、SIRT1の総蛋白質レベルが低下した。これに対してCA 単独投与およびCA とH2O2混合投与した場合、ERK1/2の活性化が抑制され、SIRT1の蛋白質発現が促進された。2. CA は, H2O2に誘導された細胞死を抑制したが、この作用は、SIRT1阻害剤であるEX527の投与によって抑制された。また、SIRT1のsiRNAが導入された細胞では、SIRT1の蛋白質発現が完全にブロクダンされ、CAの細胞保護作用も抑制された。 結論: 以上の結果から、 CAは、SIRT1発現を促進することによって、H2O2に誘導された肝細胞酸化ストレスを抑制する。また、ERK1/2の活性化はH2O2の酸化ストレス誘導作用に重要であることが分かった。CAは、SIRT1を介して、ERK1/2の活性化を制御することによって抗酸化ストレス作用を発揮すると考えられた。
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