研究概要 |
ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬SAHAのHCV RNA増幅抑制効果を昨年度検討したレプリコン細胞OR6以外で検討した結果、AH1R細胞やHCV JFH株(脇田ら)をHuh7.5細胞に導入した細胞においてもOR6同様、細胞障害を認めない濃度でHCV増殖抑制が認められた。他のORL6, ORL11細胞では細胞障害が強く、細胞障害を認めない濃度でのHCV増幅抑制効果はみられず、レプリコン産生細胞株によってSAHAの作用が異なることがわかった。 SAHAの癌細胞株HepG2に対する効果をアレイにて検討し、SAHAが、癌細胞の維持に必要で、発現亢進しているEZH2 (enhancer of zeste homologue 2) 発現を強力に抑制することを発見した。さらに網羅的検討にて、これがmiR-1246, miR-302aの発現亢進によるものであることを明らかにした。これらmiRNAの標的遺伝子であるDYRK1A, CDK2, BMI-1, Girdin発現はSAHA添加により低下し、アポトーシス、細胞周期停止、遊走能低下をきたした。ChIPアッセイを行ない、EZH2がmicroRNAのプロモーター領域へ結合する現象をSAHAが抑制することを確認した。杉山博士の樹立したHCV持続感染細胞HPIでは、細胞障害作用が強く、HCV増殖抑制効果をみることはできなかった。 以上から、SAHAのHCV 増殖抑制作用と癌細胞障害活性のバランスは、細胞のEZH2の発現に左右されることが推定された。 DNA脱メチル化剤である5-AZA (5-aza-2‘-deoxycitidine) がHCV 増殖に及ぼす影響をレプリコン細胞OR6を用いて検討した。その結果、5-AZAはHCV増殖を抑制した。その作用はSAHAとは異なり、HCV増殖を制御するmiR-122を直接減少させるためであることが示唆された。
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