研究課題/領域番号 |
24590996
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20317382)
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研究分担者 |
山科 俊平 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30338412)
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 自然免疫 / Kupffer細胞 / 制御性T細胞 / アミノ酸 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
本研究ではメタボリックシンドローム(MetS)の肝病態である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の免疫病態を解析し、免疫栄養的アプローチによる予防・治療法を検討することを目的としている。今年度は前年度に引き続き、脂肪性肝炎の進展における制御性T細胞(Treg)の関与について、抗CD25抗体を用いたTreg分画枯渇マウスに高脂肪食を負荷して検討した。CD25抗体投与により高脂肪食負荷に伴う肝脂肪化および炎症性サイトカイン・ケモカイン発現が増強し、Tregが脂肪性肝炎の発症・進展に抑制的に作用していることが証明された。また、MetSモデルKK-Ayマウスにおけるグリシンの脂肪性肝炎抑制作用のメカニズムについて詳細に検討を進めた。KK-Ayマウスは糖負荷試験で糖尿病型を示すが、グリシン投与群では糖負荷時の血糖上昇が抑制されており、耐糖能異常に対する改善効果もみられることが明らかになった。同マウスより肝マクロファージを単離し、M1/M2マーカー発現を解析したところ、グリシン投与群ではNOS2/Arginase-1発現比が有意に低下しており、M1からM2へのバランスシフトが生じていることが判明した。これらの知見より、Tregおよび肝マクロファージの機能的発現が脂肪性肝炎の病態形成に重要な役割を担っており、肝臓の糖・脂質代謝機能調節にもこれらの肝内免疫系が影響を及ぼしていることが明らかになった。また、グリシンが肝マクロファージのフェノタイプ変化を惹起する免疫栄養作用を有し、NAFLD・NASHの新規治療アプローチに有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪性肝炎の代謝病態における肝内自然免疫系の関与について、制御性T細胞および肝マクロファージの機能変化と病態形成の関連がほぼ明確になりつつある。また、実験的治療アプローチに関してもアミノ酸の免疫栄養作用についてメカニズム解析が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪性肝炎の代謝病態を、他の免疫細胞の関与および肝細胞の種差の観点から検討する目的で、ヒト肝細胞移入NOGマウスの系で高脂肪食負荷による脂肪肝モデルを作成して検討を行う。アミノ酸グリシンの脂肪性肝炎抑制作用に関しては、腸内細菌叢の変化および腸管免疫の観点からのメカニズム解析を加える。また、肝細胞特異的PTEN-KOマウスにおけるグリシンの脂肪性肝炎・肝発癌抑制についても検討を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度が最終年度で配分額が少なく、最終年度の実験計画を円滑に遂行するため。 次年度経費と合わせて、実験遂行のための消耗品代および学会・論文発表にかかる費用に充当する。
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