研究課題
本研究ではメタボリックシンドローム(MetS)の肝病態である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の免疫病態を解析し、免疫栄養的アプローチによる予防・治療法を検討することを目的としている。本年度は、脂肪肝炎を自然発症し経時的に肝発癌を生じる肝細胞特異的PTEN-KOマウスをにおける肝内自然免疫系の変化および、アミノ酸を用いた脂肪肝炎および肝発癌抑制に関する検討を行った。PTEN-KOマウスでは脂肪肝炎発症初期である10週齢の時点より肝NK細胞およびNKT細胞分画が減少傾向であり、線維化進展および腫瘍形成が認められる50週齢ではNKT細胞分画が経時的にさらに減少してほぼ枯渇状態になることが明らかになった。実際、50週齢の肝組織ではIL-4, IL-13などのNKT細胞由来Th2サイトカインの発現減弱が認められ、NKT細胞の機能的発現低下が脂肪肝炎の進展および腫瘍サーベイランス機能低下に繋がっていると考えられた。また、その病態進展過程でCD11b+Gr1+のmyeloid suppressor細胞が増加しており、NKT細胞枯渇の一因となっていることが示唆された。一方、前年度までの検討で、アミノ酸のグリシンによりメタボリックシンドロームモデルKK-Ayマウスで肝内免疫調節に伴う脂肪肝炎進展抑制が認められることを明らかにしてきた。そこで本年度は、PTEN-KOマウスにおけるグリシンの脂肪肝炎および肝発癌への抑制効果を検証した。すでに脂肪性肝炎が発症している25~30週齢のPTEN-KOマウスに20週間にわたり5%グリシン含有飼料を投与した際に、脂肪肝炎の進展抑制のみならず腫瘍形成の抑制傾向が観察された。
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