研究課題/領域番号 |
24590998
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
榎本 平之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40449880)
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研究分担者 |
西口 修平 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10192246)
今西 宏安 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (60340957)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HDGF / 肝細胞癌 / Sorafenib / IFN / 血管新生 / DNA チップ |
研究概要 |
1. SorafenibとIFNの併用療法についての検討(in vitro):SorafenibとIFNをin vitroで肝癌細胞株に投与してReal-time PCRによってHDGFの発現変化を検討した。Hep3B細胞による検討では、SorafenibおよびIFN はHDGFの発現抑制効果をもたらしたが、変化は軽度でかつ変化に時間を要することからHDGFがこれらの薬剤の直接的な標的遺伝子とは考え難い結果であった。HDGFの抑制による癌細胞増殖抑制の治療への検討に重要である。2. SorafenibとIFNの併用療法についての検討(in vivo): ヒト肝癌細胞株を免疫不全マウスの皮下に移植するXenograft modelを用い、移植後にSorafenib(経口投与)あるいはIFN(腫瘍近傍へ注入)を単剤または併用投与してその抗腫瘍効果を検討した。SorafenibとIFNと併用によって抗腫瘍効果が増強することが確認されたため、肝癌に対する新たな治療の開発につながる重要な知見を得ることができたと考えられる。3. SorafenibおよびIFNの標的遺伝子の同定と、その肝癌細胞増殖促進効果の検討 (in vitro):肝癌細胞に対してin vitro でSorafenibおよびIFNを投与してtotal RNAを抽出した。SorafenibおよびIFN投与によって生じる、HDGF以外の遺伝子の変化についてもDNAチップによる解析を現在行っている。4. SorafenibおよびIFNの標的遺伝子の同定と、その肝癌細胞増殖促進効果の検討(in vivo):SorafenibおよびIFN投与によって生じるHDGF以外の遺伝子の変化について、上記2の in vivo modelで得られた腫瘍サンプルに対してもDNAチップによりスクリーニングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDGFがIFNあるいはSorafenibにより直接制御される因子ではなく、これらの薬剤とは異なる作用機序によって細胞増殖や血管新生に関与する可能性を示すことができた。また血管新生抑制作用を有する2つの薬剤であるSorafenibとIFNとを併用することによって抗腫瘍効果が増強することが確認され、肝癌への新たな治療の開発につながりうる知見が得られた。またin vitro実験および in vivoでの実験での細胞あるいは腫瘍のサンプルを採取して、DNAチップによる遺伝子解析も開始することができた。以上の結果からおおむね順調に成果が得られつつあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の結果から、HDGFはIFNあるいはSorafenibによる直接の作用標的の可能性は低いと考えられた。したがって、それら抗腫瘍効果を有する薬剤を作用させることに加え、HDGFの発現を抑制することによってより強い抗腫瘍効果が得られる可能性がある。われわれが樹立したHDGFをノックダウンした肝癌細胞にSorafenibあるいはIFNを作用させて効果増強が見られるか検討する。またDNAチップによる解析を継続し、SorafenibおよびIFNによる抗腫瘍効果および血管新生抑制効果の機序を明らかとすることを目標として研究を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. SorafenibとIFNの併用療法についての検討(in vitro):SorafenibあるいはIFNでHDGFの発現抑制が生じなかったため、これらの薬剤に加えてHDGFの発現を抑制することでより強い抗腫瘍効果が得られる可能性がある。我々が樹立したHDGFをノックダウンした肝癌細胞にSorafenibあるいはIFNを作用させて効果増強が見られるか検討する。 2. SorafenibとIFNの併用療法についての検討(in vivo):検討する肝癌細胞株を追加してXenograft modelを作成し、引き続きSorafenibあるいはIFN投与でHDGF発現の変化を比較する。またSorafenibおよびIFNの投与によって生じる組織学的変化、血管新生抑制効果についてもH24年度と同様に検討を行う。 3. SorafenibおよびIFNの標的遺伝子の同定と、その肝癌細胞増殖促進効果の検討 (in vitro):In vitroおよびin vivoを対象としたDNAチップの検討によって遺伝子を同定する。SorafenibまたはIFN投与によって誘導または抑制される因子について、肝癌由来細胞に発現ベクターによる過剰発現とsh-RNAを用いた発現抑制を行い、発現量を増減した細胞株を樹立し、肝癌細胞増殖におよぼす影響についてMTSアッセイを用いて検討する。 4. SorafenibおよびIFNの標的遺伝子の同定と、その肝癌細胞増殖促進効果の検討(in vivo): 上記のSorafenibおよびIFN投与によって誘導または抑制される因子について、過剰発現および発現抑制を行った細胞株を樹立し、 in vivoでの肝癌細胞増殖への効果について検討を行う。
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