研究実績の概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)core領域アミノ酸70と91の変異は、インターフェロン(IFN)治療に対する抵抗性と肝発癌に関与していることが知られている。しかしその機序についてはよくわかっていない。そこでHCV JFH-1 株(genotype 2a)の非構造領域とgenotype 1b株の構造領域を持つキメラウイルスを用い、そのCore領域アミノ酸70/91に変異を導入した株を用いて、これらのアミノ酸変異がHCV増殖やIFN感受性に与える影響について検討を行った。 これまでJFH-1 株の構造領域をgenotype 1b株の構造領域に置換したキメラウイルスを用い、そのキメラウイルスのcore領域にaa70(R/Q)とaa91(L/M)に変異を導入した株(TH/JFH1-RL株、RM株、QL株、QM株)を作製することで、これらの変異がHCVのライフサイクルやIFN感受性に与える影響を解析した。その結果、aa70の変異株(QM株, QL株)では感染性のウイルス粒子生成効率が低下し、その結果、細胞内にHCVタンパク質量が増加していることが確認された。また、それらの細胞ではIFNにより誘導される細胞表面へのMHC ClassⅠ発現が抑制されていることが明らかになった。このMHC ClassⅠの発現抑制はHCVタンパク質が、宿主因子の発現抑制に関わるPKRのリン酸化を増強し、その結果としてMHC ClassⅠタンパク質の発現量が低下していることが明らかとなった。 これらの結果は、Core領域70番アミノ酸に変異を有するウイルスのタンパク質が宿主細胞内に蓄積し、感染細胞の抗原提示能を抑制することで免疫細胞による感染細胞排除を回避していることを示唆していると考えられた。これらの結果は、このウイルスのIFN治療抵抗性や肝発癌機序に関わっていると考えられた。
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