研究課題
我々は、Genotype A による成人のB 型急性肝炎は、他のgenotype では慢性化率1%以下と低率なのに対して、7-8%が慢性化することを明らかにしてきた(Ito K et al. 2014 Hepatlogy)。このように他のgenotype と比較して慢性化しやすいgenotype A の増加は、成人感染後の肝硬変、肝癌の難治性疾患の増加を引き起こすため対策が重要である。本研究では、ウイルス側と宿主側の双方からのアプローチにより、genotype A による急性肝炎の慢性化成立機序を明らかにし、今後の慢性化予防、新規治療薬開発の基礎とすることを目的とした。宿主側のファクターとしては、既報のB 型慢性肝炎に関わるHLA-DP locus (KamataniY. et al., Nat Genet, 2009) および HLA-DQ locus(Mbarek H, et al. Hum Mol Genet 2011) に存在するSNPs を用いることにより、成人におけるgenotype A による急性肝炎の慢性化との関連を調査した。具体的には同じgenotype AのHBVに感染していながら急性肝炎の一過性感染で終息した56症例、また慢性肝炎の診断でgenotypeを測定したところgenotype Aであった症例66例との間でHLAとの関連に関して調査を行った。その結果、DPB1に関連するSNPの一つとの関連を認めた。ウイルス側の要因として、B型急性肝炎発症後のHBs抗原陽性期からHBs抗原陰性期にかけてのシリーズ血清を用いてlong read typeの次世代シーケンサーにより解析を行った。その結果、発症後の時期により一時的に特徴的な変異の出現を認め慢性化への関与が疑われた。以上のように宿主側とウイルス側で遺伝子要因を解析したことにより双方から有意義な結果が得られた。これらのデータを組み合わせることにより今後は慢性化のハイリスク群を囲い込むことにより、より徹底したフォローアップもしくは早期に核酸アナログ製剤を投与する等の対策を考えることができる。
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