研究課題
今年度は、膵微小環境における膵星細胞とその他の細胞の相互作用を明らかにするため、インテグリンシグナル伝達経路に関連するアダプター蛋白kindlin-2に着目し検討を行った。膵星細胞におけるkindlin-2発現をreal time PCR、western blottingにより検討した。膵星細胞にkindlin-2 siRNAを導入し、細胞機能の変化を検討した。real time PCRおよびwestern blottingによりヒトおよびラット膵星細胞におけるkindlin-2の発現が確認された。Scratch assayにより、kindlin-2 siRNAを導入したヒト膵星細胞における細胞遊走能の低下が確認された。以上より膵星細胞の細胞機能にkindlin-2は役割を担っていると考えられる。膵星細胞とその他の細胞の相互作用におけるkindlin-2の役割については今後の課題である。更に、膵内分泌機能障害が急性膵炎の病態に与える影響について検討した。急性膵炎発症時の糖尿病の有無を確認し得た1954例を対象とした。急性膵炎発症時における糖尿病合併頻度、発症72時間以内の臓器不全、致命率について検討した。急性膵炎患者における糖尿病の合併頻度は12.8%であり、一般人口における合併頻度(10.5%)より高かった。特に60歳未満の急性膵炎患者は一般人口の同世代より糖尿病合併頻度が高かった。急性膵炎発症72時間以内の臓器不全の出現頻度を糖尿病の有無別にみてみると、糖尿病合併患者において循環不全、腎不全の出現頻度が高かった。糖尿病合併急性膵炎患者の致命率は4.0%であり、糖尿病非合併例の致命率(1.7%)より有意に高かった。ロジスティック回帰モデルを用いて多変量解析を行ったところ、年齢と糖尿病は独立した急性膵炎死亡リスクであった。
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