研究課題/領域番号 |
24591009
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 恵介 東京大学, 医学部附属病院, その他 (10608532)
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研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20396948)
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 膵癌 |
研究概要 |
JMJD3の標的遺伝子の同定 1)ヒストン脱メチル化酵素JMJD3は、転写抑制性のヒストン修飾であるH3K27me3を脱メチル化することで標的遺伝子の発現を促進する。これまでにJMJD3の発現低下が膵癌細胞の悪性度増加と関連する知見を得ているが、本年度の研究期間中に、これが癌抑制遺伝子CEBPAの発現低下を介したものであることを明らかにすることができた。具体的には、JMJD3のノックダウンによりCEBPAの発現が低下すること、JMJD3のノックダウンによる膵癌細胞株の悪性度の増加が、CEBPAの強制発現により抑制されることを明らかにした。さらに、ChIP解析により、JMJD3のノックダウンによるCEBPAの発現低下に伴ってCEBPAの転写開始点上流においてH3K27me3が増加することが判明し、CEBPAはJMJD3の脱メチル化酵素作用を介した発現調節をうけるものと考えられた。 CEBPAの発現低下は、骨髄性白血病やその他多くの固形腫瘍で重要な役割を果たすことが知られているが、その発現低下の機序としてヒストン修飾を介したものは過去に報告がない。本知見は、CEBPAの発現低下を伴う悪性腫瘍においてJMJD3の発現低下が関与している可能性を示唆するものであり、膵癌のみならず幅広いがん種においてJMJD3-CEBPA axisが重要な働きをしている可能性があり、今後の検討を要する。 2)がんにおけるJMJD3の発現低下機序の解明 JMJD3はがん抑制遺伝子としての機能が想定されており、肝癌、肺がんなどではその発現が低下していることが知られているが、その発現低下の機序は不明である。我々は、本年度の期間内に、膵癌細胞におけるJMJD3の発現低下の一因としてエピジェネティックな機序が関与する可能性を見出した。現在、その詳細について明らかにするべく検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内の目標は以下のとおり;1)JMJD3の標的遺伝子の同定 2)JMJD3の発現低下による膵がんの進展・悪性化に関与するシグナル伝達経路の同定 3)がんにおけるJMJD3の発現低下機構の解明 4)がんにおけるCD47の機能の解明 5)ヒト膵癌切除検体を用いた異種移植腫瘍の樹立 このうち、平成24年度は1)に関して予定どおりの研究成果を得ることができた。1)の結果は2)、4)の前提となるものであるため、平成24年度はほぼ1)の研究に全精力を傾注した。現在、1)の結果を踏まえて、2),4)の研究の推進を図っている。3)に関しては、平成24年度中に、その機序の一端を明らかにすることができた。 5)に関しては、手術切除検体からの異種移植腫瘍(patient-derived xenograft; PDX)の樹立に着手した。技術的な面での試行錯誤を経て、平成25年3月末時点で、4症例からの腫瘍検体で、NOD/SCIDマウスへの生着を確認できた。今後、実験に十分使用可能なサンプル数になるように、樹立できたPDXの継代・増殖をはかるとともに、新規症例の蓄積も並行して行なっていく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降の予定は、 2)JMJD3の発現低下による膵がんの進展・悪性化に関与するシグナル伝達経路を同定し、 4)がんにおけるCD47の機能を明らかにする ことを軸に、 5)ヒト膵癌切除検体から樹立した異種移植腫瘍(patient-derived xenograft; PDX)を用いて、上記知見のvalidationを行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使途は、主に試薬、マウス代、マウス飼育費用にあてる。 ・FACSを用いた細胞分離実験の試薬(細胞表面抗原に対する抗体) ・ヒト膵癌切除検体から樹立した異種移植腫瘍(patient-derived xenograft; PDX)の樹立 などにその大部分をあてる予定である。
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