研究課題/領域番号 |
24591010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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研究分担者 |
古家 園子 生理学研究所, 個別研究 村上正隆, 特別協力研究員 (20096952)
長尾 静子 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 准教授 (20183527)
中莖 みゆき 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 非常勤研究員 (30578729)
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (60402385)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵導管細胞 / Primary cilia |
研究概要 |
膵管を含めた管腔組織には、上皮細胞のapical membraneより管腔に突出するprimary ciliaが存在する。本研究では、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、以下の研究成果を得た。 (1)麻酔下にPCKラットの胆膵管にカニュレーションし、胆管を結紮することにより、純粋膵液を採取した。PCKラットでは、基礎分泌および生理的濃度のセクレチン刺激による膵液分泌量が減っていたが、アミラーゼ分泌量は正常ラットと変わらなかった。PCKラットの膵臓では、腺房細胞機能は保たれるが、膵導管細胞機能が障害されていることが分かった。 (2)実体顕微鏡下で、直径~100μmの小葉間膵管を単離した。一昼夜培養して両端が閉じた膵管を用いて溶液分泌量を測定した。PCKラットの単離膵管では、高濃度のセクレチン刺激による溶液分泌が亢進していた。PCKラットの膵導管細胞では、管腔内圧のメカノセンサー機能が障害されていることを示唆している。 (3)単離した膵管の管腔をmicroperfusionし、Fura-2を用いて細胞内Ca2+濃度を測定した。管腔灌流液にATPを加えた時の細胞内Ca2+反応は、管腔の灌流方向(十二指腸側/腺房側から)に依存していた。正常ラットの膵管では、腺房側から灌流した場合の反応が大きかったが、PCKラットでは逆であった。PCKラットの膵導管細胞では、管腔の機械的/化学的刺激に対する反応が変わっていることが分かった。 (4)PCKラットの膵では、膵管の拡張と膵管周囲の線維化が見られ、ヒト慢性膵炎に類似した組織所見を示したが、嚢胞は見られなかった。腺房細胞は正常であった。また、膵導管の上皮細胞における水チャネルAQP1の免疫活性が亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、第一に、PCKラットの膵臓外分泌腺の生理機能と形態を解析することを計画していた。生理機能の解析としては、膵液分泌をin vivo(麻酔下の純粋膵液採取)およびin vitro(単離膵管レベルの溶液分泌)で測定することができた。その結果、in vitroでは分泌亢進、in vivoでは分泌低下という逆の結果が得られた。形態については、通常の固定膵組織を光学顕微鏡により観察した。その結果、膵管の拡張と蛇行および周囲の線維化というヒト慢性膵炎に類似の所見が得られた。in vivoの膵液分泌の低下は、拡張した膵管への貯留が原因と推定される。一方、in vitroにおける分泌亢進は、primary ciliaによる管腔内圧のメカノセンサー機能の障害を示唆している。これを確かめるために、管腔をmicroperfusionした単離膵管の細胞内Ca2+濃度を測定し、管腔膜のセンサー機能を評価した。PCKラットの膵導管細胞では、管腔の機械的(灌流方向)および化学的刺激(ATP)に対する反応が変わっていることが分かった。このように、今年度の計画は概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)PCKラットから単離した小膵管を用いて、膵導管細胞管腔膜のメカノセンサー機能におけるprimary ciliaの役割の解明をさらに進める。単離膵管の管腔をmicroperfusionし、管腔内圧を生理学的な範囲で変化させ、細胞内Ca2+の応答を解析する。 (2)Primary ciliaの機能障害による膵臓の形態変化については、Gomori trichrome染色により線維化を、TUNEL法によりアポトーシスを評価する。また、実体顕微鏡下で腺房組織を取り除き、膵管樹を単離して観察する。各部位の直径、長さなどを計測する。 (3)PCKラットから単離した小膵管を用いて、膵導管細胞における以下のシグナル分子の発現をqPCRにより解析する。TRPV5、TRPV6、TRPP2(細胞内Ca2+応答)、AQP1、CFTR(水の過分泌)、Tgf-β1、Tgf-β2、Tgf-β3(線維化)、β-catenin、Wnt、Frizzled(Wntシグナル)、sonic hedgehog、Ptch1、Gli1、Gli2(Hedgehogシグナル)。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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