研究課題/領域番号 |
24591010
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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研究分担者 |
古家 園子 生理学研究所, 個別研究 村上正隆, 特別協力研究員 (20096952)
長尾 静子 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 准教授 (20183527)
中莖 みゆき 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 非常勤研究員 (30578729)
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (60402385)
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キーワード | 膵導管細胞 / primary cilia |
研究概要 |
膵管を含めた管腔組織には、上皮細胞のapical membraneより管腔に突出するprimary ciliaが存在する。本研究は、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、以下の研究成果を得た。 (1)膵臓をコラゲナーゼ処理した後、実体顕微鏡下で腺房組織を取り除き、膵管樹を単離した。PCKラット膵のmain pancreatic ductの内径は平均180μmと正常ラット(平均100μm)に比べて有意に(p<0.05、n=5)拡張していた。 (2)麻酔下にPCKラットの胆膵管にカニュレーションし、胆管を結紮することにより、膵液の分泌を測定した。PCKラットでは、基礎分泌および生理的濃度のセクレチン刺激による膵液分泌量が減っていた。また、基礎分泌時に8㎝水柱までの静水圧を加えると、正常ラットでは分泌が停止し、PCKラットでは膵液が逆流した。PCKラットの膵臓では、膵導管細胞機能が障害されており、膵導管はより拡張しやすく機械刺激に対する反応の違いが認められた。 (3)実体顕微鏡下で、直径~100μmの小葉間膵管を単離した。単離膵管の管腔をN-acetylcysteineを含む溶液でmicroperfusionして粘液層を取り除き、glutaraldehyde液に浸して固定した後、管腔を縦方向に切り開いた。オスミウム染色し、凍結乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡で観察した。管腔を観察すると、敷石状に並んだ膵導管細胞の1つ1つから管腔に突出するprimary ciliaを観察することができた。現在、PCKラットと正常ラットで形態を比較している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、膵導管細胞から管腔に突出するprimary ciliaを、電子顕微鏡を用いて観察することを計画していた。これまでのprimary ciliaの形態の研究は主に培養細胞を使ったものに限られ、本研究も困難が予想されたが、繊細な作業の積み重ねによって、nativeな上皮細胞のprimary ciliaを観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)昨年度の研究により可能となった電子顕微鏡によるprimary ciliaの形態の解析を進める。PKHD1変異/fibrocystin機能障害が、primary ciliaの形態(長さ、太さ、角度など)に及ぼす影響を解析する。 (2)膵管管腔の機械的刺激に対する膵導管細胞のCa2+応答を解析する。予備実験では、PCKラットから単離膵管では、管腔内圧を生理学的な範囲で変化させた場合に、細胞内Ca2+の過剰応答が見られている。今年度は、apical membraneのCa2+チャネルの活性を比較することにより、この過剰応答のメカニズムを明らかにする。
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