研究課題/領域番号 |
24591011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡部 健二 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50379244)
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研究分担者 |
辻井 正彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303937)
木曽 真一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40335352)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アディポネクチン / 膵癌 / 肥満 |
研究概要 |
・マウス膵癌同所性移植モデルにおけるアディポネクチンの役割:アディポネクチンノックアウトマウス(KO)および対照C57BL6マウス(WT)の脾臓に同系列マウス由来の膵癌細胞株PAN02を接種し、5週後に形成された膵腫瘍を解析した。腫瘍の体積はKOがWTの約2倍で統計的に有意な差を示した。同腫瘍におけるPCNA陽性細胞数はKOがWTの約3倍(有意差あり)、TUNEL陽性細胞数はKOがWTの約6分の1(有意差あり)、CD34陽性細胞数はKOとWTで有意差なく、αSMA陽性面積はKOがWTの約2倍(有意差あり)、コラーゲンIのmRNA発現量はKOがWTの約2分の1(有意差あり)であった。 ・膵癌細胞に対するアディポネクチンの作用:PAN02を用いて検討すると、アディポネクチンはヒトの血中濃度近くの濃度で細胞増殖を抑制した。このとき培養液中のカスパーゼ3/7活性は上昇し、アネキシンV陽性細胞は増加した。一方、ヒト由来の膵癌細胞株BxPC-3では、アディポネクチンによる細胞増殖抑制効果を認めなかった。 ・膵星細胞に対するアディポネクチンの作用:コラーゲン分解酵素の製造元ロットが変更されたことで膵星細胞の初代培養が困難となった。 ・膵癌患者の疫学研究:膵癌化学療法の治療効果に対する内臓脂肪の影響を調べることを目的にレトロスペクティブな検討を行なった。対象は阪大病院消化器内科で膵癌に対する化学療法を受けた患者82名とした。内臓脂肪は腹部CTで計測し、治療効果は血中CA19-9濃度で判定した。治療効果ありは36名で内臓脂肪面積は92.3±9.4cm2(平均±標準偏差)、治療効果なしは46名で内臓脂肪面積は91.1±6.4cm2であった。両群の面積に統計学的な有意差を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・マウス膵癌同所性移植モデルにおけるアディポネクチンの役割:目的はすべて達成した ・膵癌細胞に対するアディポネクチンの作用:アディポネクチンがアポトーシスを誘導することまでは示せたが、アポトーシスに関連する分子の挙動が未解析である。 ・膵星細胞に対するアディポネクチンの作用:研究物資のロット変更によって実験が安定して動かず、全くデータが得られていない。 ・膵癌患者の疫学研究:レトロスペクティブな臨床研究は順調に進んだ。一方で、今回対象とした消化器内科入院患者はステージが進行した膵臓癌が多いため、治療開始前にすでに体重減少している症例が多い。これが今回の結果に影響を及ぼす可能性も考えられ、解析対象となる患者の絞り込みが不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
・膵癌細胞に対するアディポネクチンの作用:アディポネクチンが膵癌細胞にアポトーシスを誘導する具体的な分子機序を明らかにする ・膵星細胞に対するアディポネクチンの作用:第一に安定した膵星細胞の初代培養系を確立する。そして、アディポネクチンが膵星細胞に及ぼす作用を細胞増殖能、細胞 外マトリックス産生能、細胞増殖因子分泌能について検討する。 ・膵癌患者の疫学研究:治療開始前に体重減少を認めない症例を中心とした疫学研究を遂行する。最初に肥満と化学療法効果の関連性を検討する。関連性を認めれば、次に患者の血中アディポネクチン濃度を測定して化学療法効果との関連性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品の購入の必要はなく、旅費は自費で負担しており不要である。したがって、研究費はすべて消耗品の購入に用いられる予定である。
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