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2012 年度 実施状況報告書

膵癌特異的なO結合型糖鎖の構造と癌形質への関与

研究課題

研究課題/領域番号 24591013
研究種目

基盤研究(C)

研究機関高知大学

研究代表者

谷内 恵介  高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50626869)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード膵臓学 / O結合型糖鎖 / 膵臓がん / 細胞増殖
研究概要

我々はO結合型糖鎖の1つ目の単糖を基質タンパク質に付加する糖転移酵素であるN-アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc-T)に着目し、GalNAc-Tファミリーの1つであるGalNAc-T3が膵癌細胞の増殖に関わっていることを明らかにした。また、GalNAc-T3は細胞増殖に関わる基質タンパク質GNAT1に膵癌特異的なO結合型糖鎖を付加して細胞増殖に関与していることも明らかにした。本研究では、GNAT1上の膵癌特異的なO結合型糖鎖の構造解析を行い、その構造が細胞の増殖亢進ひいては癌化にどのように関与するかについての知見を得ることを目的とする。本研究では「GalNAc-T3の基質タンパク質GNAT1に付加された膵癌特異的なO結合型糖鎖の構造解析」及び「GalNAc-T3により形成された糖鎖構造がGNAT1の機能にどのように影響し、細胞増殖を中心とした癌化・癌形質に関わるか」を解析する。
1 膵癌細胞から内在性GNAT1を精製し、質量分析計によりO結合型糖鎖の付加されているアミノ酸部位及びO結合型糖鎖の構造を明らかにする。
2 申請者が作成したGalNAc-T3がノックダウンされた膵癌細胞株を用いて、質量分析計により同定した糖鎖がGalNAc-T3のノックダウンにより消失するかを観察する。
3 GNAT1上のO結合型糖鎖を介して結合するタンパク質を同定する。それらが、実際に細胞増殖等の癌形質に関与するかを明らかにする。
以上の実験を行うことにより、GNAT1のO結合型糖鎖の構造とGalNAc-T3により形成されたGNAT1上の糖鎖が細胞増殖に関わる機序を明確にすることができる。当該年度内に上記(1)を施行する予定であり、ほぼ予定通りに実験を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1) 膵癌細胞から内在性GNAT1の単離:本研究では膵癌特異的なO結合型糖鎖を標的にしているため、まず膵癌細胞に発現しているGNAT1を変性させることなく精製する必要がある。アフィニティー精製のために多量の抗GNAT1抗体が必要なので、高知大学動物実験施設と共同でラビット由来抗GNAT1抗体を作成した。引き続き、GNAT1を高発現している膵癌細胞S2-013のライセートから抗GNAT1抗体を用いて免疫沈降を行った後、アフィニティー精製を行い、内在性GNAT1を精製を行った。
(2) O結合型糖鎖の付加されているGNAT1ポリペプチド鎖の作成:精製したGNAT1からO結合型糖鎖の付加されたペプチド断片を得るため限定分解を行った。エンドペプチターゼであるO-sialoglycoprotein endopeptidase(OSGE)を用いてO結合型糖鎖の付加されたGNAT1ポリペプチド鎖のアミノ酸部を切断し、分解を行った。質量分析に適応する場合、数ナノグラムの試料から糖鎖構造の解析が可能であると推測されるので、その数倍のペプチドを得ることを目標として、GNAT1ポリペプチド鎖をサンプリングしている。サンプリングが終了次第、膵癌細胞由来GNAT1ペプチド断片を用いてGNAT1のどのアミノ酸にO結合型糖鎖が付加され、どのような構造であるかを質量分析器を用いて解析する。

今後の研究の推進方策

膵癌細胞由来GNAT1ペプチド断片を用いてGNAT1のどのアミノ酸にO結合型糖鎖が付加され、どのような構造であるかを解析する。分析にはエレクトロンスプレーイオン化法を用いた質量分析器であるLTQ with ETD (ThermoFisher Scientific) を使用する。この分析機器は高知大学医学部内の共同研究センターにすでに設置されている。まず、糖鎖結合ペプチドの親水性を利用して簡易カラムで分離してから質量分析にかけ、O結合型糖鎖付加ペプチドを探索する。次に、見つけたO結合型糖鎖付加ペプチドをトラップして、電子移動解離(ETD)スペクトルと衝突誘起解離(CID)スペクトルを得て糖鎖付加部位と糖鎖構造を解析する。質量分析計によるGNAT1上のO結合型糖鎖の同定に成功すれば、GNAT1上のGalNAc-T3依存的糖鎖修飾を介して結合する相互タンパク質を同定するための実験に取りかかる予定である。

次年度の研究費の使用計画

質量分析計によるGNAT1上のO結合型糖鎖の同定のために平成24年度支給額の残額を使用する予定である。平成25年度支給額については、GNAT1上のGalNAc-T3依存的糖鎖修飾を介して結合する相互タンパク質を同定するための実験に使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] BART inhibits pancreatic cancer cell invasion by Rac1 inactivation through direct binding to active Rac1.2012

    • 著者名/発表者名
      Taniuchi K, Yokotani K, Saibara T
    • 雑誌名

      Neoplasia

      巻: 14 ページ: 440-50

    • DOI

      doi: 10.1016/j.ejphar.2012.08.002. Epub 2012 Aug 29.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] BART inhibits pancreatic cancer cell invasion by PKCα inactivation through binding to ANX7.2012

    • 著者名/発表者名
      Taniuchi K, Yokotani K, Saibara T
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7 ページ: e35674

    • DOI

      doi: 10.1371/journal.pone.0035674. Epub 2012 Apr 19.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of presynaptic voltage-dependent Kv3 channel in endothelin-1-induced inhibition of noradrenaline release from rat gastric sympathetic nerves.2012

    • 著者名/発表者名
      Nakamura K, Shimizu T, Tanaka K, Taniuchi K, Yokotani K
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 694 ページ: 98-103

    • DOI

      doi: 10.1016/j.ejphar.2012.08.002. Epub 2012 Aug 29.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Brain phospholipase C, diacylglycerol lipase and monoacylglycerol lipase are involved in (±)-epibatidine-induced activation of central adrenomedullary outflow in rats.2012

    • 著者名/発表者名
      Shimizu T, Tanaka K, Nakamura K, Taniuchi K, Yokotani K
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 691 ページ: 93-102

    • DOI

      doi: 10.1016/j.ejphar.2012.07.017. Epub 2012 Jul 14.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Meckel's diverticulum preoperatively diagnosed by double-balloon endoscopy.2012

    • 著者名/発表者名
      Taniuchi K, Tanaka H, Iwamura S, Mori I.
    • 雑誌名

      Intern Med

      巻: 51 ページ: 1023-6

    • DOI

      Epub 2012 Apr 29.

    • 査読あり
  • [学会発表] BART inhibits pancreatic cancer cell motility and invasion through Rac1 inactivation through direct binding to active forms of Rac12013

    • 著者名/発表者名
      Taniuchi K, Yokotani K, Saibara T
    • 学会等名
      Ninth AACR-Japanese Cancer Association Joint Conference, 2013
    • 発表場所
      ハイアットリージェンシー、マウイ (米国)
    • 年月日
      20130221-20130225
  • [学会発表] BARTはRac1活性を制御することにより膵癌細胞の形態を変化させ、膵癌細胞の遊走・浸潤を制御する2012

    • 著者名/発表者名
      谷内恵介, 横谷邦彦, 西原利治
    • 学会等名
      第44回日本臨床分子形態学会総会
    • 発表場所
      かるぽーと (高知)
    • 年月日
      20120928-20120929
  • [学会発表] B0031による膵癌細胞の浸潤亢進機序の解析2012

    • 著者名/発表者名
      田内亜紀, 降幡睦夫, 谷内恵介
    • 学会等名
      第71回日本癌学会総会
    • 発表場所
      ホテルロイトン札幌、さっぽろ芸文館、札幌市教育文化会館 (北海道)
    • 年月日
      20120919-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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