研究課題/領域番号 |
24591013
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
谷内 恵介 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50626869)
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キーワード | 膵臓学 / O結合型糖鎖 / 膵臓がん / 細胞増殖 |
研究概要 |
我々はO結合型糖鎖の1つ目の単糖を基質タンパク質に付加する糖転移酵素であるN-アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc-T)に着目し、GalNAc-Tファミリーの1つであるGalNAc-T3が膵癌細胞の増殖に関わっていることを明らかにした。また、GalNAc-T3は細胞増殖に関わる基質タンパク質GNAT1に膵癌特異的なO結合型糖鎖を付加して細胞増殖に関与していることも明らかにした。本研究では、GNAT1上の膵癌特異的なO結合型糖鎖の構造解析を行い、その構造が細胞の増殖亢進ひいては癌化にどのように関与するかについての知見を得ることを目的とする。本研究では「GalNAc-T3の基質タンパク質GNAT1に付加された膵癌特異的なO結合型糖鎖の構造解析」及び「GalNAc-T3により形成された糖鎖構造がGNAT1の機能にどのように影響し、細胞増殖を中心とした癌化・癌形質に関わるか」を解析する。 1 膵癌細胞から内在性GNAT1を精製し、質量分析計によりO結合型糖鎖の付加されているアミノ酸部位及びO結合型糖鎖の構造を明らかにする。 2 申請者が作成したGalNAc-T3がノックダウンされた膵癌細胞株を用いて、質量分析計により同定した糖鎖がGalNAc-T3のノックダウンにより消失するかを観察する。 3 GNAT1上のO結合型糖鎖を介して結合するタンパク質を同定する。それらが、実際に細胞増殖等の癌形質に関与するかを明らかにする。 以上の実験を行うことにより、GNAT1のO結合型糖鎖の構造とGalNAc-T3により形成されたGNAT1上の糖鎖が細胞増殖に関わる機序を明確にすることができる。平成25年度に上記(2)、平成26年度に上記(3)を施行する予定である。当該年度内に施行を予定した実験は、ほぼ予定通りに行われている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)質量分析計によるGNAT1上のO結合型糖鎖の同定 膵癌細胞株から内在性GNAT1を精製し、O結合型糖鎖の付加されたペプチド断片を得るためエンドペプチターゼであるO-sialoglycoprotein endopeptidase(OSGE)を用いた限定分解を前年度に行った。本年度は数ナノグラムのGNAT1ポリペプチド鎖をサンプリングした。この膵癌細胞由来GNAT1ペプチド断片を用いてGNAT1のどのアミノ酸にO結合型糖鎖が付加され、どのような構造であるかを質量分析器により解析した。 (2)In vivo実験におけるGalNAc-T3依存的なGNAT1への糖鎖付加の解析 GalNAc-T3ノックダウン膵癌細胞由来GNAT1において、(1)の実験にて同定したGNAT1へのO結合型糖鎖付加が抑制されるかを検討した。本実験ではコントロールとGalNAc-T3がノックダウンされた膵癌細胞間で、(1)で同定した付加部位へのO結合型糖鎖付加を定量的に比較した。安定同位体標識により代謝的に糖鎖をin vivo標識し、それぞれの細胞株からGNAT1を抽出し、質量分析器を用いて糖鎖付加の変動解析を定量的に行った。これらの実験からGalNAc-T3依存的GNAT1糖鎖付加部位およびその部位に付加される糖鎖構造をin vivoで明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で同定できたGNAT1上のGalNAc-T3依存的糖鎖修飾を介して結合する相互タンパク質を同定するための実験に取りかかる予定である。さらに、GNAT1と同定したタンパク質の細胞内局在を共焦点顕微鏡にて観察し、共局在するかを調べる。これらの結果から、GalNAc-T3依存的糖鎖修飾を介してGNAT1と結合するタンパク質候補を選択する。これらの中に細胞増殖因子が含まれていれば、細胞増殖メカニズムに関与している可能性があるため、引き続きcolony formation assay、MTT assay、Mouse xenograft modelなどを用いて膵癌細胞増殖との関係を追及する。
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次年度の研究費の使用計画 |
質量分析計を使用した実験の経費が予想よりも下回ったため次年度使用額が生じた。 質量分析計によるGNAT1上のO結合型糖鎖と相互作用する蛋白質の同定のために平成25年度支給額の残額を使用する予定である。平成26年度支給額については、GNAT1上のGalNAc-T3依存的糖鎖修飾を介して結合する相互タンパク質を同定および同定した結合タンパク質の細胞増殖における機能解析を行う予定である。
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