研究課題
本年度は1型自己免疫性膵炎におけるToll様受容体(TLR)の役割と、1型および2型自己免疫性膵炎における好中球浸潤機序の違いについて検討した。過去に腫瘤形成性膵炎として切除された1型自己免疫性膵炎の切除膵についてTLRを1から11まで染色した。最も多く発現していたものはTLR7であった。続いてこの発現細胞を同定するために蛍光免疫二重染色をおこなったところCD163陽性のM2マクロファージであることがわかった。M2マクロファージは線維化、Th2免疫反応に深く関わっていることが知られており、自己免疫性膵炎においても線維化Th2免疫反応に関与していると考えられた。日本では2型自己免疫性膵炎は稀とされているが、その主体は好中球病変であることが知られている。しかし1型自己免疫性膵炎においても好中球浸潤があることが最近わかってきた。また本疾患は欧米でよく認められていることより、日本とイタリアの2型自己免疫性膵炎の違いと、1型自己免疫性膵炎と2型自己免疫性膵炎における好中球浸潤のメカニズムの違いについて検討した。日本とイタリアの2型自己免疫性膵炎の好中球浸潤に差は認めなかった。好中球浸潤のメカニズムについてケモカインを検討すると、1型自己免疫性膵炎と2型自己免疫性膵炎において、好中球遊走因子であるIL-8に差はなかったがGCP-2は2型が1型に比べ優位に発現していた。IL-8が1型でも発現していたことは好中球浸潤が認められることに一致しており、1型と2型の好中球浸潤の違いはGCP-2によるものと考えられた。
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