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2012 年度 実施状況報告書

膵炎発症における小胞体ストレスの関与と新規治療法の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24591021
研究種目

基盤研究(C)

研究機関関西医科大学

研究代表者

西尾 彰功  関西医科大学, 医学部, 准教授 (50362463)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード膵炎 / 小胞体ストレス / セルレイン / エンドトキシン
研究概要

急性膵炎は多彩な臨床像を呈する膵臓の急性炎症で、重症例では依然として致命率が高く臨床的に重要な課題である。慢性膵炎は炎症細胞浸潤を伴う膵臓の線維化と膵腺房細胞の変成・脱落が非可逆的に進行し末期には膵内外分泌機能不全に至る病態で、膵癌の危険因子と考えられている。膵臓は蛋白合成の盛んな臓器のひとつで、膵腺房細胞に対する様々な過剰刺激は、蛋白合成に関与する小胞体内への異常蛋白の蓄積をもたらし、小胞体の機能異常(小胞体ストレス)につながると推定される。本研究ではマウスにセルレイン/リポポリサッカライド(LPS)を投与して実験的膵炎モデルを作製し、膵炎発症における小胞体ストレスの関与について検討した。セルレイン/LPS投与群では、セルレイン単独群と比べて血清アミラーゼ上昇を伴った膵炎の重症化が認められ、血中炎症性サイトカインもセルレイン単独群と比べて高値であった。膵炎組織のウエスタンブロッティングの検討では、コントロール群と比較してセルレイン膵炎発症群で小胞体ストレス関連蛋白の発現が増加しており、LPS併用群ではより高い傾向を認めた。生体には小胞体ストレスに対する応答(UPR)の一つにeukaryotic initiation factor 2-α(eIF2-α)のリン酸化を介して蛋白合成におけるmRNAから蛋白の翻訳を制御する防御機構が存在する。上記膵炎マウスにeIF2-αの脱リン酸化抑制薬を投与して膵炎の重症度の変化について検討した。薬剤投与群では無治療群と比較して血中炎症性サイトカイン上昇が抑制され膵炎の軽減が認められた。治療群では無治療群と比較して膵組織におけるリン酸化eIF2-αの発現が高かった。以上の結果より、膵炎を発症した膵組織では小胞体ストレスが亢進しており、薬剤投与でUPRを増強させることにより膵炎が軽減することが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

野生型マウスを用いたセルレイン/LPS誘発性膵炎モデルにおける小胞体ストレスの検討は実験計画通り順調に進行した。さらに、膵炎発症時の小胞体ストレス軽減による膵炎の改善効果について、eIF2-α脱リン酸化抑制薬を用いてPERKシグナル経路を介したUPRの増強による治療介入実験を行い予想された治療効果が得られた。
平成24年度に予定していた遺伝子改変マウスを用いた動物実験は、研究期間後半に大学・研究施設・動物飼育施設の移転があったため行えなかった。

今後の研究の推進方策

1.遺伝子改変マウス(C57BL/6由来CD4、CD8、RAG2各欠損マウス)にセルレイン/LPSを投与して免疫不全状態での膵炎発症と小胞体ストレスの検討を行う。
2.野生型マウスを用いてエタノール/LPS投与によるアルコール性膵炎モデルを作製し血中炎症性サイトカインの動態と小胞体ストレスについて検討を行う。
3.正常マウスからコラゲナーゼ処理で単離した膵腺房細胞に、セルレイン/LPS、エタノール/LPS、炎症性サイトカイン、過酸化水素で刺激を加えて小胞体ストレス関連蛋白の動態について検討する。

次年度の研究費の使用計画

1.野生型マウスと遺伝子改変マウスを用いた膵炎モデル作製による動物実験を行うためのマウスの購入費用とマウス膵臓病理標本の作製費に使用する。
2.膵炎マウスの血清アミラーゼ測定費用と血清サイトカイン測定のELISAキット購入に使用する。
3.膵炎組織の小胞体関連蛋白についてウエスタンブロッティングと定量的PCRを行うための試薬と抗体の購入に使用する。
4.単離膵腺房細胞を用いて小胞体ストレスの誘導と解析を行うために必要な培養液と器具の購入に使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] The similarity of Type 1 autoimmune pancreatitis to pancreatic ductal adenocarcinoma with significant IgG4-positive plasma cell infiltration2013

    • 著者名/発表者名
      Yuri Fukui
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology

      巻: 48 ページ: 751-761

    • DOI

      10.1007/s00535-012-0677-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Attenuation of indomethacin-induced gastric mucosal injury by prophylactic administration of sake yeast-derived thioredoxin2012

    • 著者名/発表者名
      Nakajima A
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology

      巻: 47 ページ: 978-987

    • DOI

      10.1007/s00535-012-0564-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparative study on experimental autoimmune pancreatitis and its extrapancreatic involvement in mice2012

    • 著者名/発表者名
      Masao Yamashina
    • 雑誌名

      Pancreas

      巻: 41 ページ: 1255-1262

    • DOI

      10.1097/MPA.0b013e31824a0e58

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dilatation of the bile and pancreatic ducts due to compression by an unruptured abdominal aortic aneurysm (AAA): a case ameliorated by an endovascular stent grafting2012

    • 著者名/発表者名
      Toshiro Fukui
    • 雑誌名

      Internal Medicine

      巻: 51 ページ: 2749-2752

    • 査読あり
  • [学会発表] Amelioration of endoplasmic reticulum stress through enhanced PERK signaling attenuates murine experimental colitis

    • 著者名/発表者名
      Takashi Okazaki
    • 学会等名
      20th United European Gastroenterology Week
    • 発表場所
      Amsterdam RAI Exhibition & Convention Centre (オランダ、アムステルダム)
  • [学会発表] The specific linker phosphorylation of Smad2/3 indicates epithelial stem cells in esophagus

    • 著者名/発表者名
      Yu Takahashi
    • 学会等名
      112th Annual Meeting of the American Gastroenterological Association
    • 発表場所
      San Diego Convention Center (米国、サンディエゴ)
  • [学会発表] Attenuation of indomethacin-induced gastric mucosal injury with prophylactic administration of sake yeast-derived thioredoxin

    • 著者名/発表者名
      Toshiro Fukui
    • 学会等名
      112th Annual Meeting of the American Gastroenterological Association
    • 発表場所
      San Diego Convention Center (米国、サンディエゴ)
  • [学会発表] Comparison of International Consensus Diagnostic Criteria and Major Diagnostic Criteria for Autoimmune Pancreatitis

    • 著者名/発表者名
      Kimi Sumimoto
    • 学会等名
      112th Annual Meeting of the American Gastroenterological Association
    • 発表場所
      San Diego Convention Center (米国、サンディエゴ)
  • [学会発表] 自己免疫性膵炎マウスにおける膵外病変の比較検討

    • 著者名/発表者名
      山科 雅央
    • 学会等名
      第43回日本膵臓学会大会
    • 発表場所
      ホテルメトロポリタン山形(山形県)
  • [学会発表] アルコール性慢性膵炎の発症における自然免疫/獲得免疫の関与の検討

    • 著者名/発表者名
      中山 新士
    • 学会等名
      第43回日本膵臓学会大会
    • 発表場所
      ホテルメトロポリタン山形(山形県)
  • [学会発表] IgG4関連肝胆膵疾患における制御性T細胞に関する検討

    • 著者名/発表者名
      内田 一茂
    • 学会等名
      第49回日本消化器免疫学会総会
    • 発表場所
      城山観光ホテル(鹿児島県)

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公開日: 2014-07-24  

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