研究課題/領域番号 |
24591023
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
洪 繁 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90402578)
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研究分担者 |
洪 実 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50631199)
中武 悠樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20415251)
石黒 洋 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90303651)
山本 明子 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60402385)
新飯田 俊平 独立行政法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (10137630)
松浦 俊博 独立行政法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (80501626)
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キーワード | 膵臓 / 幹/前駆細胞 / ZSCAN4 |
研究概要 |
膵臓の細胞は、全体の90%程度を占める外分泌細胞と残りの内分泌細胞に分けられる。ヒトを含む哺乳類の膵臓は、これまで炎症などで一旦障害されると二度と再生しないと考えられてきた。我々は、ヒトの自己免疫性膵炎患者の治療経過を注意深く観察する中で、高齢者のヒト膵臓においても、細胞レベルでは明らかな組織再生がえられることをこれまで報告してきた(Ko et al, Gastroenterology 2010)。ヒトの膵組織再生においては、他の再生能力が良く知られている臓器と同じく組織再生のための組織幹細胞が存在するはずと考えられているが、再生医療が非常に進歩した現在においても、ヒト膵組織においてどの細胞が組織幹細胞であるのか、多数の仮説が存在し、いまだに一定の定説は存在しない。我々は、胚性幹細胞と初期胚に特異的に発現するテロメア伸長因子であるZscan4遺伝子に着目し、その存在を確認したところ、ヒトやマウスなどの膵臓には、ごくわずかにZscan4陽性細胞が存在していることを明らかにしてきた(Ko et al, American Journal of Physiology 2013)。 平成25年度は、Zscan4以外の幹細胞マーカー遺伝子の膵における発現パターンを調べることで、ヒトやマウスなどの哺乳類の膵の自己組織再生について検討を行なった。マウスやヒトの膵組織では、これまで知られている細胞マーカーの局在を詳細に調べることで、膵前駆細胞の候補細胞が同定された。平成26年度は、本検討を更に進めて、これらの前駆細胞が実際マウスの膵臓レベルで前駆細胞として機能しているかどうかについて検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの膵臓が自己組織再生能力を持っていることは、我々の研究により世界で初めて同定された。更に、成人のヒト膵臓において、主にマウスの胚性幹細胞や初期胚で同定されたZSCAN4遺伝子が発現していることは世界で初めて報告した。更に現在では、内分泌細胞の前駆細胞もマーカー遺伝子の発現から同定されつつ有り、これらの細胞が実際幹/前駆細胞として機能していることを明らかになれば、ヒトの糖尿病患者などの膵組織再生治療に直接結びつく可能性が高く、その面からは研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究で明らかになってきた内分泌細胞の前駆細胞候補をマウスの膵臓より単離し、培養を試みる予定である。もし、本研究により培養が可能になれば、未だに明らかとなっていないヒトの膵臓の再生メカニズムの一端が明らかになる可能性があると思われる。
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