研究課題/領域番号 |
24591024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金子 剛 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90510181)
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研究分担者 |
松井 裕史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70272200)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光学的生検 / 蛍光偏光解消法 / 細胞膜流動性 |
研究概要 |
本年度は大腸癌患者手術検体10サンプル(内視鏡的切除症例6サンプル、外科的切除症例4サンプル)に対し検討を行った。蛍光偏光解消法による検討では、HE染色にて正常と判断された領域は腺腫・高分化腺癌および低分化腺癌と判断された領域のFP値と比較して有意に高値を示した。このことは腺腫以上の異常領域における細胞膜流動性は正常領域のそれと比較して高いと解釈される。つまり蛍光偏光解消法は正常領域と癌領域を細胞膜の性質によるFP値として線引き可能であることが示された。また、同法によって見出される流動性相違のメカニズムを脂質過酸化の観点から検索した。流動性に変化を与える可能性がある脂質過酸化量を8-OHdGによる免疫組織学的に検討した。その結果、病変領域の8-OHdG染色性は、腺腫>高分化腺癌>未分化癌の順で強く染色され、さらに未分化癌は正常より強く染色された。この結果は癌の分化度によるFP値の相違の一端を支持している可能性を示した。以上のことから蛍光偏光解消法は粘膜細胞膜流動性の相違によって、癌部・非癌部の診断可能である可能性を示した。同様に同法を用いることにより病変部位を数値にて表現できる可能性を示した。また、サンプル数が少なく有意差は認められないが、病理学組織学的な分化度(悪性度)と膜の流動性に一定の傾向性を認めた。蛍光偏光解消法は生体にとって危険な領域の励起光を用いず、毒性の高い蛍光色素を用いないという非侵襲性に加えて、内視鏡的装置にも装着可能な手法であることから、細胞膜の流動性変化という病態生理を反映した現象を捉えた意義は大きく、新しい光学的生検技術としての可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例集積およびその後の検討に対して、充分な症例数と内容を検討できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度後半は内視鏡的切除標本ばかりでなく、外科的手術標本に関しても対象を広げ検討を開始した。これによりサンプルの数が圧倒的に増加した。特に内視鏡的切除標本では限りのあった正常サンプルが数多く手に入るようになった点が今後の研究遂行に大変役に立つと思われる。しかしながら癌領域でのサンプリングでは凝血塊・壊死組織および癌の粘膜下浸潤などにより内視鏡的切除には認められなかった多くのサンプリングエラーが発生した。これに対しては検体の管腔粘膜面に対して垂直に行ってきた観察方法を、粘膜に割を入れ管腔の横断面からの観察も検討したい。これにより癌領域の一様な観察面を得ることが可能であるため、もし良好な結果が得られれば、新しい観察方法として導入する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は筑波大学付属病院において大腸切除術を施行される癌患者のうち、主として低分化腺癌の手術標本を対象に、蛍光偏光解消法による粘膜細胞膜流動性の相違によって、癌部・非癌部の診断可能か否か検討する。①蛍光偏光解消値②膜流動性変化に関連すると考えられる抗酸化酵素群の発現、及び③癌の分化度の三者の関係について、病理組織を用いて免疫組織学的に検討する。
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