研究概要 |
まず当院の臨床研究審査委員会に本臨床研究の妥当性を諮り、実施に関する承認を得た。その後、分枝膵管型IPMNが疑われる膵嚢胞性病変11例にEUS-FNAを行い、細胞診、組織診、粘液形質の免疫組織学的染色、嚢胞内容液の保存を行った。細胞・組織診と免疫組織学的検討から全例が胃型の粘液形質を有する(MUC1, MUC2, MUC5AC, MUC6: -, -, +, +)分枝膵管型IPMNと診断された。診療ガイドライン上の切除適応病変は3例であり、その内訳は病理学的に異型の強い上皮が得られ癌が疑われたもの:1例、近傍の主膵管内にIPMNの併存が発覚し切除を要すると判断されたもの:1例、繰り返す腹痛発作の原因と判断されたもの:1例であった。切除検体で前2者は上皮内癌が認められたが、後者は腺腫の最終診断であった。また、診療ガイドライン上の経過観察可能病変は8例で、外来での画像診断を中心とした経過観察を実施中であるが、増大・転移の出現など進行はみられていない。また、経過観察中に膵管癌の併発はみられていない。内容液のプロテオーム解析は切除例の3例で行ったが、良悪性の鑑別診断に有用と思われるバイオマーカーの抽出には至らなかった。経過観察例は全例が不変であるため、プロテオーム解析は未実施である。切除例、経過観察例とも症例の集積を待ち、切除例での癌 vs. 腺腫、ならびに経過観察例での増大・癌化・進行 vs. 不変に大別し、プロテオーム解析によるバイオマーカーの同定を予定している。
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